組成基準もあいまい

品質に関しても、リサイクル素材には曖昧あいまいな部分があります。

大手合繊メーカーの社員Aさんは「リサイクル生地ブランドの問題点は、リサイクルの定義が各社バラバラであること」と指摘します。

いまの市場に「リサイクル糸100%」という生地はありません。製品の質を担保するため、必ず新品の糸とリサイクル糸を混ぜて生地化します。その際、例えば「リサイクル糸5%混」という低配合でもリサイクル生地とうたえてしまうのです。

Aさんは「リサイクルナイロンを作るために新品のナイロン糸を増産している」とも証言します。

先述したように、リサイクルナイロンは、ナイロン糸を製造する際にこぼれたクズを拾い集めて作ります。その「クズ」のために、新品のナイロン糸を増産しているというのです。

増産された新品のナイロン糸は、在庫として管理されます。受注がなければ、不良在庫となり、いずれ破棄されます。それが環境に悪い影響を与えるのは言うまでもありません。

現在のリサイクル素材は質が悪く高価

リサイクル生地で興味深いのは、使用済みペットボトルから衣類を作るリサイクルポリエステルの技術が、実は20年ほど前からあったことです。にもかかわらず、現在に至るまで広まりませんでした。

それは、リサイクルするたびに、ポリエステルとしての品質が劣化するものがほとんどなうえ、新品よりも工程が増えるため製造コストがかさんでしまうからです。わざわざ高くて質の悪い物を買いたいと思う人は昔はいなかったのです。

このように、リサイクル素材(他の反毛素材も同様)は、高価で品質が悪いうえに、環境にいいとは限らないのです。メディアや繊維業界は、そうした事実をはっきりと伝えていません。これは不誠実だと私は思います。

そして多くの消費者が「リサイクル素材は環境にいい」と受け止めている現状は、実態と乖離かいりしており、改善するべきと感じます。

オーガニックコットンの真実

さらに、ファッション業界では「グリーンウォッシュ」の問題も相次いでいます。

2020年10月には、オーガニック繊維の国際的な認証組織「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GOTS)」が、通常の綿花をオーガニックコットンと偽って売買したとして、インド企業11社の認証を取り消しました。

写真=iStock.com/Daniel Balakov
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さらに2021年10月には繊維商社の田村駒が、「漁網をリサイクルしている」とうたった生地「GNB」がリサイクル品ではなかったとして、返金や返品の対応をとりました。

この2つの事例はアパレル業界で大きな話題になりました。似たようなケースは他にもまだあるでしょう。「リサイクル品」という表示が必ずしも正しいとは限らないということです。