いまファッション業界では「エコ」や「リサイクル」をうたった商品が人気だ。しかし、そこには思わぬ落とし穴がある。ライターの南充浩さんは「一部のメーカーでは、リサイクル素材になる『クズ』を確保するために、不要な糸を増産している。『環境に良い服』を買ったとしても、本当に環境に良いとは限らない」という――。
ペットボトルとポリエステル繊維、リサイクルのイメージ
写真=iStock.com/NATALIA KHIMICH
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環境問題を一気に解決できる技術はない

現在、アパレル業界では「エコ」や「リサイクル」への注目が高まっています。なぜなら、そうした価値のある商品が、よく売れるようになっているからです。

しかし、結論から言うと、世間の皆さんが期待するほど、環境問題を一気に解決できるような技術は繊維・アパレルの分野において確立できていません。

環境対策に取り組むことは必要ですが、メーカーの現場担当者や部長クラスには、厳しい環境基準やリサイクル素材について、「オフレコ前提」で疑問を呈する人が多いのです。

さらに、あたかも環境に配慮しているかのようなポーズをとる「グリーンウォッシュ」行為も業界内で少なからず見受けられます。

良くも悪くも環境問題への関心が高く、その結果、繊維・アパレル業界のあちこちで不具合が出ているのです。今回はそうした現状をお伝えします。

リサイクル素材に明確な規格はない

素材メーカーや生地問屋、商社などは、リサイクル素材の企画、製造に非常に注力しています。ですが、素材の規格は会社によってバラバラで、現場や消費者に混乱を与えているのが現状です。

例えば、「リサイクルコットン」は本来、原綿を綿糸に紡績する際に出るクズ(落ち綿)を拾い集めて、それを再度紡績して綿糸にしたものです。

似た商品で、使用済みの綿製品を崩して綿糸にしたものは「反毛はんもう」があります。反毛は綿だけでなく、ウール生地、複合生地でも行われる手法です。いずれの場合も元の生地より相当表面の粗い生地になります。

この反毛と「リサイクルコットン」は別物ですが、同一商品として販売されていることがあるのです。

ついでに、代表的な2つのリサイクル素材を紹介します。

大手量販店でもよく見かける「リサイクルポリエステル」(「再生ポリエステル」とも)は、ペットボトルやポリエステル生地からポリエステル繊維に再加工したものを指します。

「リサイクルナイロン」は、ナイロン糸を生成する際に出るクズを拾い集めて再度ナイロン糸にします。製造の原理はリサイクルコットンと似ています。

ナイロンはポリエステルと同じく石油を原料とした化学合成繊維ですが、使い古したナイロン生地や他の石油製品からの再生はできません。