カスタマー・エクスペリエンスの概念と似ている
ここ数年、「X」のつく用語として、「カスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience、略してCX)」という概念に注目が集まっています。
「顧客体験」もしくは「顧客体験価値」と訳されます。「商品・サービスの購入、利用における顧客としての体験」および「体験をとおして得られる感覚的・心理的価値」を意味するようです。
このカスタマー・エクスペリエンスの概念とコト消費のあり方は重なるものがあります。
お客様が商品やサービスを購入し、利用する際、その商品やサービスと自分との関係性に意味を見出し、それを体験することに得られる心理的・感情的な価値を大切にする。それがコト消費です。
ヒト(お客様)は、モノをとおしてコトを体験することで価値を感じ、満足感を得る。モノの価値に対して、コトの価値とは、お客様が体験することで得られる価値、すなわち、顧客体験価値といえるでしょう。
セブンが他のコンビニチェーンを圧倒する発注の仕方
カスタマー・エクスペリエンスの概念は2000年代に入ってから注目されるようになったようですが、セブン‐イレブンでは、1970年代の創業当時から、仮説・検証を実践することで、お客様に満足していただける顧客体験を提供し続けてきたのです。
コトの価値、すなわち、顧客体験価値を重視することは、収益に結びつきます。
同じコンビニエンスストアでありながら、なぜ、セブン‐イレブンは他チェーンに対し、日販でこれほど差を広げることができるのか。
要因はさまざまありますが、一つには、セブン‐イレブンがお客様に、商品やサービスの購入をとおして、モノとしての商品の質の高さとともに、ご満足いただけるような、コトとしての体験価値を提供しているからではないかと思われます。
セブン‐イレブンでは、毎日、午前中に翌日のための発注を行います。ただ、明日のお客様のニーズは目に見えません。そこで、明日の売れ筋商品について仮説を立てます。
まず、明日の気象条件、行事・イベントなどの「先行情報」をもとに、お客様の心理を読みます。その心理をもとに、単品ごとに明日の売れ筋商品の仮説を立て、発注し、販売の結果をPOS(販売時点情報管理)データで検証し、次の仮説に活かします。
どんな風に仮説を立てるのか。わたしがたびたび例としてあげるのが、「海辺のコンビニと梅おにぎり」の例です。