『君たちはどう生きるか』がベストセラーになった背景
200万部を超えるベストセラーになった、吉野源三郎さんの小説をマンガ化した作品『君たちはどう生きるか』は、お父さんを3年前に亡くした中学2年生、「コぺル君」こと本田潤一君が日常生活で直面するさまざまな問題を通して、母方の叔父さんと、生き方を見つめて成長していく物語です。
しばしば、引用されている叔父さんのコペル君に対しての言葉は、自己存在感を考えるヒントになるでしょう。
例えば、
「君は何も生産していないけれど、大きなものを毎日生み出している。それは何だろうか? お互い人間であるからには、一生のうちに必ずこの答えを見つけなければならない」と。
それこそが自分が自己存在感を持つこと。成し遂げた成果による肯定感でなく、すべての人は、存在しているだけでさまざまなものを生み出しているということ。それに気づくことだと言えます。
自分が生み出しているものは、認知的に定量化できるものではなく、思いやりや感謝や優しさなど、定量化できないすばらしいものを、日々すべての人がたくさん生み出していることが、生きるということなのです。生きて命がある限り生み出していることがあるのですから、それを感じてみましょう。それを感じることが非認知スキルと言えます。
それがすべての人の自己存在感の源となるのです。多くの人がこのマンガに共感したのは、自己肯定感至上主義の中で苦しんで生きている人がたくさんいて、何かのヒントをこのマンガに求めていた証拠ではないでしょうか?
あなたはどんな会社で、どんな風に働きたいか
生産性を問われるのは、会社だと思われるかもしれません。そう、皆さん、自分という会社を経営しているのです。自分という会社の社長は自分で、自分という会社の従業員は自分です。
自分という社長は、どんな自分という従業員が好きですか?
自分という従業員は、どんな社長を好みますか?
社長も従業員もどんな会社だと安心するでしょうか?
社会から肯定されるために生産性を上げて上場し、株価を上げることだけでいいでしょうか?
それでは社長も従業員も会社も次第に疲弊してしまうことになりはしないでしょうか?
常に売り上げを上げ続けることは、果たして可能でしょうか?
それにより肯定感を維持し続けるのは疲れるし、しんどく苦しいでしょう。
会社の成功体験をつくり続けることはできますか?
自分という会社にとって売り上げではなく、毎日生み出している定量化できないものにも目を向けて存在感を醸成していないと、その会社はそのうちに売り上げも下がってしまうことにもなりかねません。
社長が癌や心筋梗塞などの病気になるかもしれません。社員は売り上げのプレッシャーばかりで、社長から受けるハラスメントに苦しむことになり、次第に家族仲も悪くなり孤独になっていくかもしれません。気分がふさいでうつ病を発症することもあるでしょう。
そして、この会社は潰れてしまうことになるのです。
自分という会社経営をどうしますか?
それが「どう生きるか?」ということなのです。
自己肯定感を高めるだけの視点を外して、自己存在感を大事にした生き方を選択していくことが、結局のところ充実した仕事や人生につながります。それが、自分らしい、自分にしかできない自分会社の経営と言えます。