成功体験の呪縛が広める「自己否定感」
自己肯定感とセットのように広がっているのが、「成功体験」という言葉です。
成功体験が少ないから自己肯定感が高まらないという意図でも使われます。つまり、自己肯定感の必要十分条件として成功があるということです。まさに認知的な発想です。
成功とは結果の1つであり、外にある誰かが評価してできあがった1つの概念に過ぎません。それなのに、成功、成功と成功に呪縛されています。そのため成功にしがみつくことで、苦しくなっているケースがよく見られます。
成功を強調するがあまりに、失敗への恐れが生じ、それによって自己肯定感どころか自己否定感が広がっているのです。
成功は、自身でコントロールすることはできないし、勝手に誰かが定めた定義に基づいたものに過ぎません。私たちが幸せな人生を歩むためには、成功体験よりも自分の存在そのものを土台にする考え方が必要です。それこそが自己存在感を育むからです。
自身でコントロールできる自分の内側の“ある”を、外側の成功よりも大事にして価値を重んじるのです。例えば、自分が感じること、自身が一生懸命取り組むこと、自身がワクワクすること、自身が好きなこと、などです。
自分の「ある」を見つけるのは簡単です。だって、あるのですから。それを評価して肯定や価値をつくり出す必要はありません。
とはいえ、難しく思えるのは、今まであなたが認知的に進化・教育されてきたために、何事も外界に向けて脳が働いてしまうため、「自身の内にある“ある”を見つめる能力」が低下してしまっているからです。
でも、ちょっと視点を変えれば、誰でもできるようになります。
繰り返しますが、自分探しの旅などに出かける必要はなく、自分は今ここに存在しているのですから。「ないもの探し」ではなく、「あるもの見つけ」をすればいいのです。
いま、これから必要なのは「自己○○感」
今、皆が呪縛されている「自己肯定感至上主義」から脱却しましょう。自己肯定感という社会のハラスメントから解放されましょう。
外界、結果、他人などに依存する認知脳とは別の発想で、「自己肯定感」を見つけ、持つことが、これからのVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代において、自らが強くしなやかに生き抜くための大事なスキルの1つになります。
外界が不安定であればあるほど、外界に依存したり、結果に頼ったり、他者と比較したり、他の情報に振り回されている人は、自己肯定感を高めにくくなります。なぜなら、不安定なだけに、スピード感を持って尺度が次々と変わり、振り回されることになるからです。
そのような変化の激しい時代だからこそ、外界に頼らざるをえない「自己肯定感」ではなく、「自己存在感」を持つことが、囚われずかつブレないあり方を実現させるのです。