人々がカフェに求めていたもの

「当時は、コロナ禍でカフェに行きづらい、外出しづらい雰囲気もあり、より一層、私たちの『綾鷹カフェ』シリーズに期待感が高まったのだと思います」と話すのは、日本コカ・コーラ マーケティング本部の下永加奈子さん。

写真提供=日本コカ・コーラ
日本コカ・コーラ マーケティング本部 下永加奈子さん

21年3月といえば、街に桜が咲き始めていた時期。前年春から「ステイホーム」が叫ばれ、我慢を強いられてきた人たちは、「ようやく春が来たのに、まだゆったり外出できないなんて」と不満を口にしていました。

また、コロナの問題が起きる前から、下永さんたちはカフェネイティブな若者をはじめ、現代の生活者がカフェという場に「心のやすらぎ」を求める傾向を把握していた、とのこと。

「会社帰り、あるいは仕事や家事が一段落したとき、お気に入りのカフェに立ち寄ってホッとひと息ついたり、心を整えたりする。綾鷹カフェシリーズで、そんな心の充足を感じてもらえれば、との思いがありました」

もっとも綾鷹は、すでに誰もが知る緑茶ブランド。07年のブランド誕生以来、“日本茶”のイメージをもつ消費者も多いなか、「カフェ」や「ラテ」のニュアンスを取り入れたことで、SNS上では「え? あの綾鷹が、ラテ?」と驚きの声が上がっていました。

その意外性こそが話題を呼び、人気につながった背景もあるでしょう。半面、意外な商品だからこそ、世に出るまでには乗り越えるべき壁があったのも事実。さらに「コロナ禍ならではの、開発段階での苦労もありました」と下永さんは言います。

お茶のプロに加えてカフェのプロも合流

苦労の1つが、協力者とのコミュニケーションです。

綾鷹は、「急須でいれたような本格的なお茶の味わいを目指す」ブランド。「これぞ綾鷹」といううま味や渋み、苦みの絶妙なバランスと味わいの実現にあたっては、07年の発売当初から、創業450年を数える京都・宇治の老舗茶舗「上林春松本店」の協力を得てきました。

21年発売の綾鷹カフェという、新シリーズの展開に際しても、「数年前から社内で温めてきた思い、すなわち『和の素材を使って“カフェ”を打ち出す』との構想があり、上林春松本店さんに相談をもちかけました」と下永さん。

一方で、同茶舗はあくまでもお茶のプロ。ミルクを加えた「ラテ」を展開するとなると、新たに「カフェ」のプロが必要になる。そこで日本コカ・コーラが声をかけたのが、コーヒーのロングセラーブランド「ジョージア」でもビジネスを共にしてきた「猿田彦珈琲」。多くが知る、スペシャルティコーヒーの専門店です。

綾鷹カフェのシリーズ開発段階から、2社とも非常に協力的で、「弊社のスタッフも含め、皆が『飲む人たちに、本当においしいと思ってもらえる製品を創りたい』とワクワクしていました」と下永さん。