3社で白熱した議論を交わした
それだけに、第1弾「抹茶ラテ」の開発にあたっては、ラテと抹茶の絶妙な味わいバランス、とくにほどよい甘みや香りをいかに実現するかで、3社(者)が白熱した議論を何度も交わしたとのこと。
その際、まず日本コカ・コーラのスタッフが試作品を何パターンか作り、協業する2社が試飲。そのうえで、「抹茶らしさとは遠いので×」や「ラテ本来の味わいが表現されていて○」など、2社がコメントする手順で進められたのですが……、「やり取りの段階で、3社が一堂に会することが難しくなりました」と下永さん。
理由は、新型コロナが徐々に猛威を振るい始めたから。よって、試作品を2社に郵送で送り、3社が「リモート(オンライン)」でやり取りせざるを得なかったといいます。
オンラインでの商品開発で「抹茶らしい」をどう伝えるか
リモートとなると、協業する2社が「どんな表情で」試作品にOKやNGを出したのかが読み取りにくい。また、お茶とカフェのプロが、それぞれ「抹茶らしい」や「ラテ本来の」などと表現するニュアンスはどんなものかも、具体的な言葉にしないとつかみにくい。
そこで、日本コカ・コーラの開発部隊は、2社のコメントに対し「それって、こういうことですか?」と、全員の共通言語にすべく「因数分解」するような作業を、何度も繰り返し行ったそうです。
たとえば、上林春松本店が指摘する「抹茶らしさ」には、口に含んだときのザラつき加減や鼻に抜けるときの心地よい香りなど、微妙なこだわりが数多くあったとのこと。
また、「これぞ」という試作品が完成したあとも、製造ライン上で「ぜいたくな量の抹茶を使っていることから、製造ラインでトラブルが発生することが多々ありました」と下永さん。
そのたびに修正を繰り返し、何度も製造上の課題を検証しながら、製品化に向けて開発を進めたとか。構想(2018年)から発売(21年春)までに、2 年以上を要したそうです。
産みの苦しみを経て誕生した第1弾の抹茶ラテが、発売直後から、予想以上の反響を得たのは既述の通り。
当初から、下永さんたちの頭の中には、「第2弾を出すなら『ほうじ茶(ラテ)』だな」があり、早々に開発に着手したとのこと。
ただ、ほうじ茶ラテには、抹茶ラテとまた違った難しさがあったと下永さん。
「たとえば、焙煎に適した温度や、採用する茎と葉のバランス、ほうじ茶のキャラメルっぽい微妙な甘みの実現など。そうした『ほうじ茶らしさ』をミルクに負けないように表現しながら、でも存在を立たせ過ぎない……、その辺りの調整にも苦慮しました」