休業手当を支払わない大手ファミレスチェーン
本来であれば、この会社はEさんに対してシフトが減った分の賃金を補償する義務があります。海外の法的拘束力を持つロックダウンとは異なり、日本の緊急事態宣言下では、店舗を閉めるかどうかはその会社の判断に任されているので、会社の判断で休業したのであれば、少なくとも労働基準法第26条の定める休業手当を支払う義務が生じます。
もちろん、企業経営自体が難しくなっている可能性もありますが、そのような場合でも雇用調整助成金という国の補助金を使えば解雇ではなく、休業手当を支払いながら雇用を維持することができたのです。
この補助金は国籍や在留資格、雇用形態などに関係なく適用されますので、外国人のアルバイト労働者であるEさんももちろん対象です。しかしこの会社は、外国人そしてアルバイトであることをいいことに休業手当についても雇用調整助成金についても曖昧にしたままやり過ごそうとしたのです。
「特定技能」はどの業界でも働けるわけではない
派遣社員として都内のアパレル店で働くモンゴル人のFさん(20歳代女性)は就労ビザを得て2年ほど前からこの派遣会社と雇用契約を締結して、朝9時から夜6時まで週5日働いていました。語学力を活かしたインバウンド観光客向けの接客や通訳が主な業務でした。当初の契約書には「期間の定め:なし」と書かれており、ファッションに関心があったFさんはこの仕事が気に入り、できるだけ長い間働きたいと思っていました。
しかし、緊急事態宣言が発令される直前の2020年3月頃から、週5日のシフトが週4日に減り、Fさんの給料も減りました。そして4月にはシフトがほとんどなくなり、4月半ばに会社から「この店舗の仕事はもうない。別の派遣先も見つかるかわからない」と言われ、転職活動を行うよう勧められました。
とはいえ、インターネットで調べても他の店舗も同じように休業しているか時短営業をしており、新規採用をしている企業はほとんどありません。また、Fさんの在留資格では就くことができる仕事が決まっており、仕事であれば何でもいいわけではありません。もし別の業種に転職する場合は、在留資格そのものを変更しなければいけません。そもそもコンビニや工場などの「単純労働」には就労ビザは下りませんので、いくらこれらの業界が人手不足だったとしてもFさんには関係がありません。