そのうえ、例年30%台で推移してきた事業主都合での離職率(退職者のうち、本人都合ではなく解雇など会社側に理由があって辞めた人の割合)が、2020年4月には57%、7月には69%にまで上昇していることを踏まえると、多くの外国人労働者がコロナ禍で会社によってクビにされたということが明らかになっています(*2)。
加えて、就職率は日本国籍の労働者よりも15ポイントほど低くなっている状況をみると、コロナ禍で外国人は辞めさせられやすく転職しづらい、悲惨な状況に置かれていることがわかります。
何十年働いても日本人労働者の賃金に追い付けない
また給料面での差別も深刻です。厚生労働省の2020年「賃金構造基本統計調査」によれば、正規労働者(25~29歳)の平均賃金が24.9万円、非正規(同)が20.2万円に対して、「特定技能」で働く外国人(平均年齢28.1歳)は月額17万4600円、技能実習生(平均年齢27.1歳)の場合は月額16万1700円に留まっていました。
さらに、一般労働者の給料を1とした場合、外国人労働者の給料は勤務開始時に0.94とすでに格差があるだけでなく、勤続年数に応じてその差が広がっていき、勤務10年以上の場合、0.73にまで格差が開いています(*3)。
ここからよく言われる「外国人労働者の賃金が低いのは勤務年数が短いから。新入社員は皆、給料が低い」という説の誤りは明白です。外国人労働者は何十年働いても、「日本人」労働者と同じ賃金にはならないのです。Dさんの働いていたレストランのように、同じ仕事をしていても外国人だけ有期雇用でかつ給料が低いといった雇用差別が日本中に蔓延しているのです。
労働基準法が禁じる国籍差別が蔓延している
日本の労働基準法では国籍などに基づく差別が禁止されていますが、実際の雇用現場では差別が蔓延しています。賃金面のみならず、ケガや病気のリスクが高い仕事に外国人労働者のほうが多く従事していることも明らかになっています。特に製造業や建設業においては、外国人労働者が「日本人」労働者の約2倍の割合で労災に遭っています(*4)。つまり、全体的にみても、外国人労働者はより危険で低賃金の仕事をあてがわれているのです。
そしてコロナによって明らかになった2点目は、企業側は違法性を認識しながら、それでも外国人に対する雇用責任を果たそうとしなかったことです。前述の雇用調整助成金を活用すれば、技能実習生やアルバイトの留学生も含めて、無給で休ませることや解雇する必要はありませんでした。
むしろ、雇用調整助成金を活用せずに解雇してしまうと、労働契約法の定める合理的な理由による解雇に該当せず不当解雇と判断される可能性もあったのですが、それでも一方的にクビを切っていたのです。
(*1)竹信三恵子・蓑輪明子・今野晴貴「コロナで顕在化した日本の女性差別をどう乗り越えるか――市場化される公共サービスとケアワーク、そこでの労働運動の役割」『POSSE』vol.47。
(*2)厚生労働省「外国人雇用対策の在り方に関する検討会中間取りまとめ」(2021年6月28日)。
(*3)同前「外国人雇用対策の在り方に関する検討会中間取りまとめ」。
(*4)今野晴貴「「墜落死」、「腕切断」も頻発 技能実習生の労災死傷は「2倍」!」2021年5月15日。