拡散現象を生み出したい…大切なのは「共感」
プロモーションや広告コミュニケーションの実務者の間では、「バズ」をうまく活用したいという関心も高い。というのも、若年層では、商品やサービスの認知や好感度がSNS経由で高まることも多いためだ。特に食品や飲料など消費財を扱う企業にとっては、話題喚起力のあるバズ現象を望む声も大きい。それゆえに、バズを起こす方法論がさまざまなかたちで模索されるようになっていった。
また、SNSの時代はユーザーが発信者になっているからこそ、共感が大切だといわれる。それは間違いのないテーゼであり、現代のシェアやその連鎖たるバズを語るうえでも欠かせない。その内実とは、単なる情報ではなく「私」の想いや感情が乗っかることで、そのシェアは加速的に広がっていくポテンシャルを帯びるということだ。
発信者が心を動かされたというその事実にこそ、人々は共振して、シェアされたものはさらにシェアされていく。企業がリソースをかけてつくったしっかりした動画よりも、それを見て感動したことを伝えるユーザーの動画のほうが何百倍もシェアされて広がっていく――そんなことが日々起こっているのだ。
SNS受けのいい企画を生み出すフレームワーク
CHOCOLATE社のチーフコンテンツオフィサーである栗林和明氏はSNSでバズるコンテンツをつくり出すことに定評があるが、そのための発想の手掛かりを「バズ6つの原則と80の切り口」として整理している。6つの原則は図表2だ。これを満たしていることは、多くの人に関心を持ってもらうための「第一関門」であると言えるだろう。
そのうえで、次の図表3のような「80の切り口」とを結びつけて企画していくわけだ。バズる企画を考えたい人にとってはとても参考になるフレームワークだ。
ただし、バズってもブランドへの好意につながるかどうかは別問題であるし、企画を立てて綿密に実施したとしても、「バズ」が起こるかどうかは確定的ではない。私たちは良いアイデアや面白い施策さえあれば、生活者に受け入れられて「バズる」と考えがちだが、インターネットサイエンスの領域で著名なダンカン・ワッツが著した『偶然の科学』(早川書房、2012年)の考えに則るならば、それは少々甘い見通しなのかもしれない。