自分の中にジョブズを持て

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最強の商品を作り上げる「ジョブズ式プロセス」(※図版は取材をもとに編集部作成)

ジョブズ思考の特徴の3つめは、意思決定や商品化のスピードが異常に速いことです。ジョブズはiPodの開発にあたり、発売まで約2年かかるところを、半年に短縮するよう命じています。しかしそのおかげで、後発だった携帯音楽プレーヤーの市場を独占できた。

いまやライバルに勝つには、スピードが重要であることはいうまでもありません。このスピード感を養うには、ジョブズが社員にそうしたように、自分に対して無理難題を投げかけてみることです。2カ月かかる仕事なら、2時間でできないか考えてみる。100万円かかるものなら、10万円でできないかどうか試してみる。自分の中にジョブズを持てば、そういう発想になるはずです。

ジョブズの判断は非常に速いことで有名です。ある企業を買うか買わないかという重大なことですら、一晩で結論を出してしまう。日本企業なら1年くらい待たせた揚げ句、NOだったりする。

なぜそんなことができるのか。それは自分の中に確固たる判断基準があるからでしょう。本当は私たちも自分を基準にすれば答えはすぐ出るのですが、なかなかそうはいきません。「上司や世間がどう思うか」「ライバルと比べてどうか」など、違う尺度を持ってくるから迷って時間がかかる。ジョブズのように自分を尺度にする強さを持つと同時に、その判断基準を磨くことでしょう。

それには、現場・現物、そしてユーザーを見ることです。ジョブズも若いころは自分の尺度と世間の尺度がズレていました。しかしやがて彼がいいと思うものは世間もいいと思うようになり、次々とヒットを飛ばすようになったのです。

ジョブズ思考は協調性を重んじる日本企業では相容れない面もあります。しかしこれからの時代は、このような強さも併せ持っていなければ生き残れない。「自分の中にジョブズを持つ」ことは、これからのビジネスマンにとって、絶対に必要なことなのです。

――ジョブズに一歩でも近づくことを決意した立花君。最近ではスーツを脱ぎ捨て、作業服姿で工場や研究所を訪れる立花君の姿が見られるようになった。

経済・経営ジャーナリスト 
桑原晃弥

慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。主な著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)などがある。
(構成=長山清子 撮影=武島 亨)
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