1年以上もいじめを認めない学校の対応に苦しむAさんのケース
「もしもし森田さんですか。実はうちの子どもがいじめに遭っているのですが、もう1年以上も学校・教育委員会と話し合いを重ねているのに、学校・教育委員会はいまだにいじめの存在を認めようとしないんです」
いじめの相談は私の携帯に直接かかってくることもあるし、Protectチルドレンのホームページに寄せられることもあります。
「お子さんは、どんないじめを受けているんですか」
「Aという子から仲間外れにされて、学校に行くのがつらいと言っています」
いじめの約80%が「悪口」と「仲間外れ」。暴力を伴うような激しいじめは10%もなく、SNSを使ったいじめが増えているのが最近の傾向です。
「お母さんとしては、その状況をどうしたいんですか」
「とにかく、加害者と保護者に謝罪をしてほしいんです。子どもは傷ついているわけですから」
「でも、学校も教育委員会もいじめを認めていないわけですよね」
「そうですよ。もう、私が直接話をしてもらちが明かないので、森田さんに入ってもらって、直接、学校・教育委員会に話をしてもらえないでしょうか」
「わかりました。では、私が学校と教育委員会に連絡を入れて一度面談をしてみて、その結果をお伝えしますね」
こういう場合、教育委員会に連絡を入れるとたいてい校長先生も呼んでくれるので手間が省けるケースが多いです。
典型的な学校・教育委員会の対応
約束の時刻に教育委員会に向かうと、会議室にはすでに校長先生も来ていました。
「初めまして、Protectチルドレンの森田です。私はあくまでも中立の第三者の立場でこの問題にわらせていただきます」
こう自己紹介をすると、最近は「ああ、あの森田さん」という反応が多くなりました。先日、参加した文科省の「いじめ防止対策協議会」に教育委員会の方も大勢来ていたので、私の活動を理解してくれている学校・教育委員会が増えてきたためです。
「先日、××中のBさんの保護者から相談がありまして、BさんがAさんという生徒から仲間外れにされているのに、学校・教育委員会がそれを認めようとしないとおっしゃっているんですが」
校長先生が口を開きました。
「保護者の方からそういうお話をいただいて、学校としても当該生徒がそのような行為をしたのかどうか確認をしましたが、当該生徒はやっていないと言うし、クラスの生徒たちの証言を得ることもできないのです」
「つまり、仲間外れにしている事実はないということですか」
「いや、いじめを認めろ、認めろと言われても、教員が現場を目撃したわけでもなく、周囲の生徒たちの証言もなく、動画や音声の記録があるわけでもない。つまり、何の証拠もないのに、当該生徒に向かって『お前、やっただろう』と決めつけることはできないのです。学校には捜査権もありませんから、これ以上調べることもできません」
典型的な学校・教育委員会の対応です。やっぱりマスコミが言う通り、学校や教育委員会はいじめの解決に対して消極的で、しかも隠蔽体質なんだと感じた読者が多いのではないでしょうか。
しかし、真実は必ずしもそうではないと私は思うのです。