PTAは保護者と教職員による任意加入の団体だ。結成や加入を義務付ける法的根拠はない。ところが、実態は必ずしもそうではない。ノンフィクションライターの大塚玲子さんは「ある保護者は、加入しない意思を伝えると『お子さんに不利益がありますよ』と役員に言われたと証言した。多くのPTAでは、活動の強制があることも知らされないまま、加入を強制されるという状況が続いている」という——。

※本稿は、大塚玲子(著)、おぐらなおみ(イラスト)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

PCを用いて作業をしている人たち
写真=iStock.com/kazuma seki
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「決まらないとお子さんの教室に行けませんよ!」

——入学式の後に体育館に軟禁状態でクラス役員決め。「決まらないとお子さんの教室に行けませんよ!」と言われた。(コアラさん)
——夫婦とも残業休出アリのフルタイム正社員。本当に無理なのに「共働きは、できない理由にならない」と言われた。(ぷにさん)
——委員に選ばれたが「下の子が小さいのでできない」と話すと、自分で代わりを見つけるよう言われ、結局見つけられず、やらざるを得なくなった。(冬子さん)
——シングルマザーで仕事が忙しく学校行事にも出られないが、一部の保護者から怒った口調で「係はみんな1度はやるんです!」と突然話しかけられた。(新しい下水道さん)
——転入したてのお母さんが役に当たって泣いてしまい、「代わりにやる」と手を挙げたが「あなたはもう何度もやってるから」と他の人たちに止められた。(Nさん)

PTAが嫌われる最大の要因、それは「活動を強制すること」でしょう。

強制の対象はなぜか母親のみ。「自分も我慢してやったんだから、他の人もやらないのはズルい」という怨念から生じる強制力は、ある種、呪いのようです。多くのPTAでは、活動の強制があることも知らされないまま、加入を強制されるという状況が続いています。

活動強制が一番目立つのは、入学式の後や、4月の保護者会の後に行われる「クラス役員決め」(委員決め)のときです。多くのPTAには「6年間に必ず1度(か2度)は委員をやる」「各クラス(または各学年・各地区)から必ず◯人の委員を出す」などの謎ルールがあるため、長い沈黙が続いた末、じゃんけんやクジ引きで役を決めたり、休んだ人に役を押し付けたりすることになりがちです。

なかには役員を「できない理由」をみんなの前で言わせ、他の保護者たちがその理由を認めるか否かを挙手で決めたり(「免除の儀式」と呼ばれることも)、病気の人に医者の診断書を提出させたりするPTAもあり、泣く人が出ることも珍しくありません。保護者同士のつながりをつくるどころか、関係を悪化させている面も少なからずあるのです。