PTA活動にはさまざまな課題があり、過渡期にある。一部のPTA役員たちの熱意や義務感が暴走して、退会しようとする保護者や非加入会員に対し、「子どもへの差別」をちらつかせるケースもある。
職場に「役員決め」の電話
鹿児島市に住む岩元美紀さんは、数年前の5月、子どもを通わせている幼稚園のPTAに退会を申し出た。園では初めての退会者だった。
きっかけは、「バザーの役員決め」の電話が、携帯電話ではなく、仕事中の職場にかかってきたこと。この幼稚園では各家庭から持ち寄った物品を販売したり、ゲームなどの出し物をしたりする「PTAバザー」を毎年開催していた。PTA会費は半年ごとに3000円を支払っていた。それまでほかの保護者と同様にPTA活動に参加してきたが、「あまりに非常識」と感じた。
だが、12月上旬になって、「退会をとりやめてほしい。会費の納入をお願いしたい」という趣旨の手紙を、園長から手渡された。
10日後には、園長やPTAを仕切る保護者たちが、職場の昼休みに押し掛けてきた。保護者たちはこう言った。
「退会するんですってね。退会したら、お子さんに不利益がありますよ」
進級祝い「ぼくのはある?」
園長まで、「幼稚園の行事で4月にPTAから贈られる進級祝いや月ごとの誕生日会のプレゼント、運動会でのメダルも渡せない」と言う。
残念ながら、それは脅し文句ではなかった。
幼稚園児たちは4月の進級祝いでは絵の具セットを手渡される。でも、「うちの子は何もなかった」。
その日、岩元さんが息子を園に迎えに行くと、「ぼくのはある?」と、心配そうに尋ねられた。
最初は何のことかわからなかったが、棚に整然と並べられたほかの子どもたちのかばんを見て、理解した。かばんには進級祝いの大きな絵の具セットが入っていた。
「ぼくのは『おうちにあるよ』って、先生が言ってた」