これら搭乗者のインタビューからは、インバウンドを迎える前から日本人の移動に使われているということがわかる。手の届く運賃であれば、利用者は必ず存在するという見本のような路線だった。遠くて普段会いづらい人たちを結びつける役目も果たしていた。
低運賃だからこそ、需要を取り込めるという自信
ピーチが路線拡大という強気の戦略を採るのは、コロナ禍は必ず収まるという希望的な観測が前提にあるように感じる。ただ、コロナ禍であっても格安であるがゆえに移動需要の取り込みや掘り起こしを実現させるという自信がピーチにはある。
確かに感染爆発で一時的に乗客は激減し、ピーチは苦境に立たされた。だが、感染状況が一段落すれば需要の回復も早い。格安だからこそ、その変動もまた大きいのだ。コロナ禍が過ぎ去るのをじっと待つだけでなく、こうした需要を取りこぼさないこともピーチが積極姿勢でいる理由になっていると感じる。
ピーチは今年3月、就航開始から10年を迎えた。すなわち日本のLCCの歴史は10年にすぎない。世界で歴史あるLCCは創業から50年を超えたが、日本はまだ市場に受け入れられたばかりだ。有償旅客キロでの日本のLCC3社(ピーチ、ジェットスター、スプリング)のシェアは13%。各国平均の30~50%までにはまだまだ遠い。逆に言えば、伸びしろがあるということだ。
中・長距離LCCではJAL系ZIP Airに加え2023年下期にはANA系の第3ブランドAir Japanが就航し、国際線で新たな競争が始まる。20周年に向けて近距離から長距離まで全ての路線をカバーする和製LCCの役者が出そろった。LCCがコロナ後の航空需要を牽引することになる。
ピーチが進めた路線拡充という種は、コロナ禍で小さな芽を出している。コロナ後に一気に花を咲かせ、実を結ぶことになるだろう。
気兼ねなく飛行機に乗って旅行できる日が待ち遠しい。