名言を自分なりの言葉に言い換える
もう1つ、「クラシック・クオート」の事例を紹介しておきます。
今回は、古典的名著というよりも、古典的名著からの抜粋集といった位置づけの本である、『坂村真民一日一言』を選びました。このような書籍であれば、さらにハードルは下がると思います。次の図表3を見てください。
この「紙1枚」を見て「あれ?」となってしまったと思いますが、今回は少しだけフレームをアレンジさせてもらいました。といっても変更点は1つだけで、左半分の真ん中にタテ線を引く際、一番上からではなく中央のヨコ線から下に引いてほしいのです。
これをやることで、「A?」のフレームに収まりきらない分量の名言に出会ったとしても、左上の3行分のスペースに記入することができるようになります。
『坂村真民一日一言』(坂村真民 致知出版社)
これが、まとめておきたいと感じた名言です。このくらいの分量であれば、字を小さくすることでまだまだ「A?」の欄に書けるかもしれませんが、「クラシック・クオート」において、左半分は他のフレームワーク以上に「メモ欄」的位置づけが強くなります。
そもそも何も書かない場合や、書いたとしても15個も必要ないケースが大半なので、むしろ左半分に長めの名言を記入するスペースを設けてしまった方が、より現実的・実践的に機能するはずです。こうした判断から、このアレンジを加えました。
記入方法自体は最初の例と基本的に同じなのですが、1点だけ。
従来の「A?」の欄は、このバージョンの「クラシック・クオート」では別に空欄のままでも構いません。ただ、もし余力があれば、「長めの名言を自分なりの言葉で煎じ詰めるとしたら?」といった問いを立て、その答えを埋めてみてほしいのです。
今回のケースでは、「分かって満足より使って満足」と自分なりに一言集約しました。
このプロセスもまた、「スロー」思考を働かせる良いトレーニングになりますので、エネルギーが十分にある状態の時は、積極的にチャレンジしてみてください。
10枚以上の「クラシック・クオート」を作成する価値がある
最後にもう1冊、愛読書の例を挙げておきます。
この本自体が、エッカーマンによるゲーテの至言・名言・金言の引用集といった位置づけの作品なのですが、およそビジネス書や自己啓発書に書いてあるようなメッセージは大体この本のどこかに書いてあるのではないかというくらい、引き込まれる言葉の宝庫です。
今回の例は個人的に響いた箇所で恐縮ですが、「百万の読者を期待しないような人間は、一行だって書くべきではないだろうね」を引用しました(図表4)。
当初は別の文を引こうと考えていたのですが、執筆の合間に再読した際、この部分が目に留まり頭を殴られるような衝撃を受けてしまいました。本書はたかがビジネス書かもしれませんが、ビジネス書もまた「本」です。
「百万の読者に役立ててもらう気概で、この本を、大切な本質を世に問うんだ」といったハングリーさを、この1文から取り戻すことができたと感じています。やはり、古典の読書は格別です。