【村沢】日本の電池産業といえば、かつての鉛蓄電池の時代にはGSユアサが強かったのですが、リチウムイオン電池に移行して存在感が薄くなっています。パナソニックも、EV用蓄電池で2016年までは世界1位だったのですが、最近では、中国CATLと韓国LGに抜かれて3位に後退。しかも、年々シェアを下げています。日本の電池産業を守るには、国策として、日本勢の合従連衡が必要かもしれませんね。

日本勢は全固体電池で巻き返しを図るが……

【村沢】もう一つ、日本車の生き残りがかかった問題といえば、全固体電池がありますね。電池の電解質を固体にすることで、大容量化が実現できる。そのため、全固体電池の実用化に成功すれば、EV市場の勝ち組になれると言われています。

その全固体電池の開発ではトヨタが進んでいると言われていますが、中国のNIOはもうじき「ある種の固体電池」を搭載したEVを発売すると発表しています。

NIOは今年3月に初のセダン「ET7」を発売予定です。その新型が早くも今年11月にも登場するのですが、その「新型」こそ、150kWhの「固体電池」を積むと言われているのです。

これは「全固体」ではなく、粘土質の「半固体」の可能性もあります。しかし、150kWhという容量は破格で、いずれにせよ、画期的な電池であるのは間違いないでしょう。

一方、アメリカのクアンタムスケープ(QS)社は24年にも、フォルクスワーゲン(VW)に全固体電池を供給するとしています。

村沢義久『日本車敗北 「EV戦争」の衝撃』(プレジデント社)

【井上】公開情報だと日産も進んでいるようです。24年に試作ラインを設置し、28年に商品化すると発表しています。

ゴーン氏の解任以来、思い切った投資が増え、かつての技術の日産が戻ってきたかのように見えます。栃木工場をインテリジェントファクトリーに変えて、EVの生産体制を強化しているところです。

ただ、全固体電池は生産技術が非常に難しいそうですし、安全確保もハードルが高いと言われています。全固体電池をEVに搭載するのは無理だと言うメーカーも出始めているくらいです。トヨタは全固体電池をEVではなく、ハイブリッド車から使い始めるようです。

【村沢】「固体電池」の実用化が目前に迫る世界と比べて、日本企業の取り組みはむしろ遅れ気味ではないかと危惧しています。

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