背景にあるのは「国の原子力事業への方針」

逆に言えば、今の東芝の迷走も、国の原子力事業への方針が定まらないことが大きい。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、政治は原発の将来の方向性について議論することを避け続けている。安全性が確認されたものから再稼働するとはしているものの、将来的には原発依存を下げていくともしている。そうした中で、原子力技術を将来にわたってどう継承していくのか。抜本的に考えることすら放棄している。国民世論を二分する原発に「前向き」な政権だとなれば、選挙に響くと考えているからだろう。

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民間電力会社に原発を維持させている原発政策にしても、今後どうするのか不明なままだ。現状の原発は、いずれ稼働年限が来て廃炉になっていくが、原発の新設の可否どころか、リプレイス(建て替え)の議論すら事実上タブーになっている。仮にリプレイスをするにしても、それを民間の「事業」として行うのか、国の事業として行っていくのかも、まったく議論されていない。経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない。

日本の原子力政策の混乱を象徴している

そんな状況の中で、原子力技術の研究開発や、原発新設、廃炉などの事業を東芝や日立などの民間会社に「独自に」行わせる体制を続けられるのか。東芝は福島第一原発の廃炉作業に大きく関与しており、会社のあり方が定まらない中で、本来、国が責任を持たねばならない廃炉作業が宙に浮く危険性もはらんでいる。

本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない。

ロシアによるウクライナへの侵攻で、原油価格が高騰を続けている。また、西側諸国がロシア産原油・ガスの輸入停止に踏み切れば、価格高騰だけでなく、エネルギー確保にも重大な支障を来しかねない。そんな中で、将来のあり方を議論することなく、原発へのなし崩し的な依存へと進んでいく可能性もある。そうなれば、東芝はまたしても国策に振り回されることになるかもしれない。

東日本大震災からまもなく11年。東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴していると言ってもいいだろう。

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