「妹の誕生」は地獄の始まり
やがて、妹が生まれた。32歳になっていた母親は産後、妹ばかりを可愛がるようになり、緑川さんのことは放置。妹と関わることも禁じられ、母親の許可なしには妹に近づくことさえできない。「顔見に行っていい?」とたずねると、「今起きてるから、手を洗ってマスクをしてから行きなさい」と言われて、その通りにして初めて妹のそばに行くことができた。
妹誕生から半年が経った頃、母親は妹の世話にかこつけて、緑川さんのものの洗濯や食事の支度を一切しなくなる。10歳(小4)になっていた緑川さんは、洗濯も食事の用意も、自分でするしかなかった。
さらに、継父も変化していく。以前は厳しいながらも、大人として節度を保った言動をしていたが、緑川さんに対してあからさまに、「嫌々面倒をみてやっている」という態度で接するようになる。
妊娠した母親から家事を押し付けられるようになったのが気に入らなかったのだろう。ましてや会社経営をしていて多忙な人だ。この頃から継父が買ってきた総菜や弁当に緑川さんが駆け寄ると、「お前は最後だよ、図々しい」と言い放ち、常に不機嫌な様子。
あるときから、機嫌を損ねると浴室に連れて行かれ、執拗に顔にシャワーを浴びせられるようになる。緑川さんは大量に水を飲み、苦しくて何度も「死ぬのではないか」と思ったが、母親は助けに来ない。
やがて妹が1歳になると、母親と継父は引っ越しを決めた。歩き始めた妹のために、今より広い家に移ろうというのだ。
引っ越した後、母親は、妹に関わること以外の家事は一切せず、家政婦を雇い始める。
しかし、その家政婦も半年ほどで、「あの家政婦、費用が高い割には、私の持ち物や服装をジロジロ見て、品定めをしてくるようで嫌だったのよ」と被害妄想のような理由でクビになった。