余計なことで衝突したくないから何も言わない

【塚谷】何も言われないことでいい部分ってありますか?

【バラカン】うーん、どうだろう。人それぞれで感覚が違うから、何とも言えないな。そのスイス人の女性は人からいろいろ言われたり、意見を求められたりするのをうるさく感じる。そういう人は日本で暮らしやすいと思います。

逆に、もっと意見を言いたい人はヨーロッパのほうがやりやすいでしょう。まあ、それぞれ自分の得意なところでやっていけばいいのかな。「お疲れさま」で終わらせるのは日本のやり方で、もう慣れましたけど。

塚谷泰生、ピーター・バラカン『ふしぎな日本人 外国人に理解されないのはなぜか』(ちくま新書)

【塚谷】余計なことを言ってぶつかりたくないと考えるのが日本人なんですよ。

【バラカン】人と衝突したりすると人間関係が難しくなるから、何も言わない。

【塚谷】なかなか言えないですよ。たとえばバラカンさんがいいと思っていることについて「バラカンさん、あれよくなかったよ」と言えばそこでぶつかってしまうから。「お疲れさま」で終わらせるのは日本の典型的なスタイルですけど、ヨーロッパではそれで終わることはまずなくて、逆にいろいろと言われますよね。「あれはちょっと言い方がおかしかったんじゃないか。こういうふうに言ったほうがよかったよ」とか。

【バラカン】それもお互いを理解することですよね。でも「お疲れさま」という言葉もまた訳せないんだよなぁ(笑)。

ヨーロッパには“ねぎらいの言葉”がない

【塚谷】仕事が終わったとき、英語で何て言うのかな。金曜日に「じゃあワイン飲もうよ」とかそういうのはあるけど。

【バラカン】See you next week.とか。

【塚谷】たしかにヨーロッパでは終わって「お疲れさま」とは言わないね。それこそSee you next week.で終わりで。ねぎらいの言葉ってないですよね。

【バラカン】なかなかないですね。日本には「ご苦労さま」とか「お疲れさま」とか、そういうねぎらいの言葉がたくさんあるけど。

【塚谷】みんなでまとまって一つのことをやった後は、そういうふうにお互いの健闘を称えて丸く収めようとするというか。「じゃあ、また来週ね」という感じで。

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