相談を受けたとき、「検討します」「一晩考えさせてください」と答えていたら、その後の展開はなかっただろう。問題はできるかどうかではない、目の前にチャンスがきたら、しっかりとつかむこと。そして、約束したからには「必ずやる」ということである。

そして、“三大精神”にある「出来るまでやる」についていえば、こんな話がある。

会社の主要商品をFDD(フロッピー・ディスク・ドライブ)モータからHDD(ハード・ディスク・ドライブ)モータへと大きく転換したときのことである(この詳細については、『成しとげる力』の第4章でも述べる)。

「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」でつかんだ成功

当時、HDDで業界トップを走っていたアメリカのメーカーから受注をもらうべく奔走したが、すでに競合他社が納入しており、入り込む余地がなかった。私もアメリカに乗り込んで本社を訪問したが、担当者に会うことすらできない日々が続いた。

永守重信『成しとげる力』(サンマーク出版)

だが、あきらめなかった。シェアトップをめざすためには、何が何でもトップメーカーを攻略しなければならない。これは私の信念だった。

そこで、このメーカーの東京支店長に何度もアプローチをかけ、「日本電産はどんな要求にもスピーディに対応する」とくり返し強調した。これが功を奏し、ようやくアメリカ本社への営業活動が認められたのだ。

ここからが勝負だ。ただちに本社のあるシリコンバレーのサンタクララに営業担当者を常駐させ、「一日に一回は必ず訪問して、粘り強く交渉を続けよ」と命じたのだ。担当者はサンプルを持参して改善すべき点などを聞き出し、日本に持ち帰っては作り直すという、気が遠くなるような作業を延々とくり返した。

こうしたことが一年近く続き、ついに世界に先駆けてHDD用のスピンドル(精密回転軸)モータの実用化に成功した。それによって、このメーカーの厚い壁を打ち破り、参入することができたのだ。技術スタッフの奮闘と、一年にわたって日参した営業担当者の地道な努力がここに実ったのである。まさに、「出来るまでやる」を実践したわけである。

このメーカーの当時の副社長は、のちにこのときのことを振り返り、「ナガモリの姿勢には、ネバー・ギブ・アップの精神を感じた」と評してくれた。

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