組織のホームページによると「学校、社会における退行的、分裂的、破壊的なイデオロギーを見つけ顕在化させ、責任者をあぶり出すことに専念してきた」とし、「言論の自由と思想の多様性は、自由な社会の基本的な構造であり、常に保護され祝福されるべきものである」と「自由」の重要性を強調する。
「批判的人種理論に反対する声」として各メディアが報じることによって組織の知名度は実際の会員数よりも明らかに大きくなっている。共和党は既にこの組織に接近し、「共和党はParty of Parents(親のための政党)だ」というスローガンを掲げている。
バージニア州知事選において、「批判的人種理論に反対する親の会」は「民主党候補のマコーリフはこの理論を支持している」と主張し続けた。
マコーリフは「CRTはバージニア州で教えていない。この批判は人種差別主義者の犬笛だ」と反論したものの、僅差で共和党候補ヤンキンが勝利した。
教育をめぐっても広がるアメリカの分断
共和党にとって、中間選挙の決め手となるのが、バージニア州知事選で効果的だった「民主党は学校でCRTを広めている」というレッテル貼りである。
今秋にかけて「批判的人種理論(CRT)」という聞きなれない言葉がさらに大きな論争を呼び、この理論に基づく教育カリキュラムを阻止する動きが、南部の州から全米に広がっていく。また、この動きは2024年の大統領選出馬を虎視眈々と狙うトランプへの追い風となるだろう。
奴隷制がもたらした問題を直視することは、平等で多様な社会を作る上で当然である。そう考えると、理論に対するバッシングは、そもそも「濡れ衣」のような話といえる。
だが既に、理論の本当の議論を飛び越えて、教育においても皮膚の色をめぐる「アイデンティティの政治」が、アメリカの分断をさらに広げているのだ。