山積みされた1枚6円の古着で迷惑を被る人がいる
転売にせよ、寄付にせよ、先進国から古着が大量に送られてくれば、現地の人たちはそれらを格安、またはタダで手に入れることができます。
例えば私が活動するウガンダ共和国では、とある市場で国外から輸入された古着が山積みになって売られています。これらの古着は、日本円にして1枚6円で販売されているのです。いくら現地の人たちが経済的に貧しい生活をしているからといって、1枚6円というのは、あまりにも安すぎます。
そもそも古着というのは、先進国側で「捨てられるはずだった服」なわけですから、輸出や移送にかかるコストを抜けば、ほとんどタダ同然です。
先進国から大量に流入してくる安価な古着によって、迷惑を被っているのが現地の仕立て職人や繊維産業に従事する人たちです。
アフリカの多くの国々では、ミシンを使って自分で服を生産したり、繊維工場を経営したりすることで生計を立て、自立した生活を送ろうとしている人たちがいます。
しかし、そういった人たちがいくら頑張って商品を作ったとしても、国外からタダ同然で入ってくる古着には到底太刀打ちできません。
途上国への援助がすべて「善」ではない
衣服ではありませんが、途上国に対する食糧援助においても、同じような問題はたびたび起きてきました。
例えばある国で自然災害や紛争が発生すると、国外から大量の食糧援助が入ってきます。もちろん自然災害や紛争が発生した直後の国では、栄養不良や飢餓も深刻な問題となるため、緊急的な食糧援助も必要です。
しかし、需要と供給のバランスを考えればわかるように、無料の食糧援助があまりにも大量、かつ長期的に流入してきてしまえば、その地域における食料価格は下落してしまいます。
例えば中南米の島国ハイチでは、2010年1月に発生した大地震によって壊滅的被害を受けた後、アメリカをはじめとした先進国から大量の米が援助として流入してきました。
ですが、地震が発生してから数年が経っても、なお海外から米が届けられていたのです。その結果として、現地で農業に携わっていた人たちは自分たちの生産する米が売れなくなってしまい、多くの失業者が出ました。海外からの援助が、ハイチの米を自給自足する力を奪ってしまったのです。それと同じようなことが、古着の現場でも起きていると言えます。