方針が乗用車に向く政府、商用車に向く自動車業界

政府内では、各産業でどのようにCO2を削減できるのかを具体化すべしという“お達し”が出ており、例えば運輸部門では2035年の新車販売で100%、HEV、PHEV、EV、FCVを軸に、購入補助、充電インフラや水素ステーション設置、工場の設立、サプライヤーの業態転換等の支援が検討されている。この際も「EVを買ってもらうためには何をすればいいか?」の対象が一般消費者、すなわち乗用車であるように、視点の不足感は否めない。

一方、自工会では、近年、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)という新しい領域での技術革新CASEの進行により、商用ニーズが増加していることもあり、商用車と乗用車の両軸で推進する視点を持つようになった。そればかりか、アライアンス1つとっても、CJPT(※)をはじめ、乗用車メーカーが商用車領域で提携する場や機会は増えている。このように、商用と乗用という持つべき視点のズレが両者の方針のギャップを生む一つの要因と言える。

※Commercial Japan Partnership Technologiesの略。2021年4月1日に、いすゞ、日野、トヨタが、商業事業において新たな協業に取り組むことを目的に設立した新会社。2021年7月スズキとダイハツが参画。

環境負担は「油井から車輪まで」を考えるべき

2つ目は、エネルギーに対する考え方とその方針である。

自動車からのエネルギー効率を示す指標には、「Tank to Wheel」と「Well to Wheel」という考え方がある。Tank to Wheelは「自動車の燃料タンクからタイヤを駆動するまで」で、1Lのガソリンで自動車が何km走行するのか、走行時にどれだけCO2を排出するかを示す指標であり、Well to Wheelは「油井から車輪まで」で、資源の採掘から車が走行するまでの自動車の総合的なエネルギー効率を示す指標である。

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Well to Wheelで分析・評価しなければ、真に環境負担が軽減されているのか、判断できない。仮に、CO2を排出しないパワートレインを利用していてもそのエネルギーを生成する際にそれ以上のCO2を排出しているようであれば、本末転倒である。

現在このようなモデルになっていることが多いものの、このことが配慮、言及されることが極めてまれであり、自動車業界としてはエネルギー業界との連携(エネルギー業界は自動車以外にも住宅・建設、運輸などとの連携)を強める必要がある。現時点で再生可能エネルギー政策が諸外国よりも後れを取る日本においては、どのようなエネルギーを使っているのか、まで考慮することは欠かせない。