「日本企業に就職したい」実現できる留学生はわずか半分

現在「国大協資料集」(2020年)で、学生のうち学士課程の78%は私立大学に、修士課程の59%、博士課程の68%は国立大学に所属している。また、学部に所属する留学生の83%は私立大学、とくに人文・社会学系に多く、大学院の留学生の63%は国立大学、とくに理工系に多く、大きな偏りが見られる。

出身国はアジアが多く、とくに中国からくる留学生が半分以上を占めている。これからアジア諸国の人口が増えていくことを考えると、日本で学ぶ留学生の数も増していくだろう。留学生の多くは日本企業に就職したいという希望を持っているが、その半分ぐらいしか実際に就職できていないのが現状である。

こうした留学生の動向に日本の高等教育がどう応えるか、日本の産業界の要請を考慮しつつ、国公私立の大学がどう分担して留学生を受け入れていくかが課題となっている。

さらに、高等教育を受けるにあたっての経済格差を是正するため、授業料の無償化が始まった。日本は米国や英国に比べると大学の授業料は比較的低額に抑えられているが、私立大学、とりわけ医学系の学部では高額な授業料が必要となることがある。授業料無償のEU諸国、授業料負担をいったん国が引き受け、卒業後の給与額に応じてそれを返還する仕組みがある英国やオーストラリアなどに比べると、まだ大学進学率が低い現状にある。

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日本の国民が平等に高等教育を受ける権利を行使でき、高度な知識と技術をもって社会に貢献するために高等教育を正しく位置づけ推進する必要がある。

少子化社会でいかに質の高い教育を提供するか

しかし、大学も運営上の大きな問題を抱えている。少子化の影響を受けて18歳人口が減少し、大学入学希望者数が定員を下回って定員割れをする大学が出始めている。それを防ごうとして各大学は多様な入学試験を考案して、学生獲得に熱を入れ始めた。高校の推薦だけで入学させる大学や、高大一貫校として高校からそのまま入学させる大学も増えた。

また、入学してくる学生の能力の多様化や資格取得の希望に応じて、専門学校に近いカリキュラムを提供する大学もある。このように大学が多様化する中で、国立大学は運営費交付金に過度に依存しないように自己資金を獲得し、いかに質の高い教育を提供するかが問われている。