禁止されても開催された犬肉祭り

マスクの着用や手洗いなど、衛生に関する啓蒙活動が徹底的に行われた。

高口康太『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)

パーソナルスペース、つまり人間同士の距離をとり、ソーシャルディスタンスを保つ習慣も広がった。流行初期に、ある中国在住の日本人企業家に話を聞くと、「中国人の衛生観念が変わる歴史的転換点になるでしょう。どれだけ豊かになっても、清潔にはならなかった街が、そして人々が一気に変化すると思います」と語っていた。

ところが半年ほどが過ぎた頃、再びその企業家に話を聞くと、ほとんどがコロナ前に戻ってしまったという。中国では今でも感染が時々確認されているが、大半は海外からの来訪者で、国内での感染は抑止できているといっていい。多くの人にとってはコロナ前の暮らしが戻ってきた。それに伴って、衛生に関する意識も元の木阿弥になったのだとか。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のは個々の国民だけではないようだ。前述の野味禁止の大号令もどこまで実施されるのかは不透明なままだ。先述の玉林犬肉祭りは2020年も21年も、いつもどおりに開催されたという。明らかに違法行為だが、法律があっても本当に運用されるかどうか、わからないのが中国である。

大事件が起きれば、それに対応して何かを禁止したり対策したりすることはできる。だが、そうした変化はあくまで一時的なもので長続きさせることができないのだ。これこそ中国の課題だ。

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