塾禁止、ゲーム禁止、ボーイズラブ禁止ときて…

10月23日、中国の国会に相当する全国人民代表大会の常務委員会で、子どものしつけなど家庭教育の充実を保護者に求める「家庭教育促進法」が成立した。2022年1月から施行する。これは、家庭教育への保護者の意識向上を目的としたものだが、子どもの“著しい不良行為”に関しては、政府が訓戒を行うことも定めており、子どもを持つ中国人の間で「具体的にどういうことが起こるのだろう……」と不安が広がっている。

思えば、今年7月以降、中国政府は子どもに関する政策を次々と発表してきた。1つ目は子どもの過度な学習負担を軽減する「双減」政策だ。小中学生の宿題を軽減し、学外教育(主に学習塾)も軽減するというもので、これにより小学1~2年生は宿題禁止、小学3~6年生の宿題量は目安として60分以内、中学生は同90分以内と定められ、学習塾チェーンは一夜にして閉鎖に追い込まれた。

自宅で母親と一緒に勉強している子ども
写真=iStock.com/itakayuki
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2つ目は「ゲーム禁止令」だ。18歳未満の子どもがオンラインゲームをする場合、金曜~日曜と祝日の午後8時からの1時間のみとし、オンラインゲームの有料アイテムに使う課金の上限も定めた。それまでの「平日は90分以内、週末は3時間以内」とする規制をさらに強化。18歳未満はログインする際に実名とID番号の登録もしなければならなくなった。

なぜ政府がここまで家のしつけに干渉するのか

3つ目は、なんと「ボーイズラブ禁止令」。政府はオンラインゲームを運営するテンセントや網易(ネットイース)などのゲーム運営会社に対して「未成年がゲーム中毒となることを防ぐように措置を講じること」を強く指示。その中には「誤った価値観や違法な内容を含むコンテンツ(わいせつで暴力的、血まみれの描写、女のような男性、ボーイズラブ)を排斥するように、という記述もあった。

日本人の目から見ると「なぜ、そこまで政府が子どもの教育や日常生活にまで干渉する?」と不思議に思うだろう。各家庭でそれぞれ処理すればよい問題で、国家がいちいち口出しをするような事柄には思えないからだ。

だが、そこには、中国の極端すぎる家庭教育や中国特有の事情が関係している。何事も「やりすぎ」の傾向がある中国人が少なくないため、それに眉をひそめていた人々の間では、これらの政策に対して「賛成」の声もあるといわれる。では、中国では、これまで、どのような家庭教育(しつけ)が行われてきたのか。以下、私がこれまで中国の友人や知人から聞いた実態の一部を紹介しよう。