社長自ら電話しユーザーに感想を聞く

服部さんの「現場」を知ろうとする行動は、これだけに留まりません。

ここまで事業として成功してからも、なんと「スナックミーの服部と申します」と名乗り、みずから数人ずつの利用者に電話。「ご利用になってどうですか?」など、一スタッフとしてナマの声を収集し続けているというのです。

こうした行動を、私たちマーケティングの世界では「定性調査」と呼びます。グループインタビューや一対一のデプスインタビューによって、観察者が見聞きした印象、あるいは対象者から発せられるナマの言葉や行動などを知る、地道な調査手法です。

一方で、現代はインターネット調査、あるいは定点カメラやICカード等の履歴によって、膨大なデータが蓄積されていく時代。一般に、データ量が増えるほど精度も増しますから、自動化・システム化して大量に情報を収集するほうが、圧倒的に効率がいい。しかも、いまやAIがその結果を24時間365日、機械学習して分析してくれます。

スナックミーに限らず、先の「ネットフリックス」や「Amazonプライムビデオ」のような動画配信サービス、野菜宅配サービスの「Oisix(オイシックス)」、あるいはユーザーの好みに合った娯楽チケットを毎月届ける「recri(レクリ)」など、サブスクのサービスにおいては、後者の「定量調査」の概念とAIによる分析システムが、一人ひとりに合ったコンテンツや商品を自動的に「お薦め」してくれるのが強みです。

変化の兆しをつかむ定性調査

ですが、それだけでは必ずしも「変化の兆し」をつかむことはできません。

私も長年、マーケティングの実査に携わる立場から、たとえどれだけ定量調査が自動化、デジタル化されても、人が自身で見聞きして情報を集める「定性調査」を怠っては、顧客の変容や次の時代への流れに気づけないと痛感します。

精度の高いレコメンドエンジンを導入したのちも、みずから目や耳による情報収集を欠かさない服部さん。その姿勢こそが、自分たちを「永遠のβ版だ」として成長し続けようとするスナックミーの今後を切り開くのではないでしょうか。

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