コーチに逆らえない生徒や保護者
春夏の甲子園で4度優勝を遂げた県岐阜商野球部が県教育委員会から部活動の原則休止の要請があったにかかわらず練習を行い、その際に部員の頭部にボールが当たる事故が起きていたことが10月下旬、メディア各社で一斉に報じられた。
事故が起きたのは、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出されていた9月1日。打撃マシンにボールを投入する部員の前頭部に防球ネットをすり抜けた打球が直撃した。ところが練習を指揮していた同校の教諭は119番通報せず、現場にいた保護者の自家用車で県内の病院に搬送するよう指示したとされる。部員は吐き気を訴え続け10日間入院したという。
ライバル校が自粛するコロナ禍での“闇練習”に、生徒や、現場にいたとされる保護者らは異議を唱えなかったのだろうか。
筆者は昨年、県岐阜商と同じように部活動禁止のルールを破って練習していた、首都圏にある公立中学校男子バレーボール部の関係者を取材したことがある。このバレー部顧問も全国大会優勝を複数回達成している。暴言に加え、パワーハラスメントの情報が自治体に寄せられたが、効果的な指導が行われたとは言い難い状態だった。
取材を重ねると、活動継続のためにパワハラ顧問をかばう親と、改善したい親というように保護者間で断絶が発生。その親同士の溝は、子供同士の関係性にも大きな影響を与えていた。