慢性の腰痛への地道なアプローチが必要だ
孫子の兵法 第四章 軍形篇に「善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ」の一節があります。「戦い上手な者は、まず自軍をしっかり守って、誰にも負けないような態勢を整えた上で、敵が弱点を現して、誰もがうち勝てるような態勢になるまで待つ」という意味です。
慢性の腰痛という敵が、真の原因を浮かび上がらせるように、さまざまな角度から原因の仮説と検証を繰り返し、エビデンスを積み重ね、正しい対処に導くことが、腰痛治療との闘いに勝つための地道なアプローチと言えましょう。MRIは慢性腰痛という敵を知る重要な情報ではありますが、すべてではありません。
痛みがこじれる要因、気をつけるべき医者について、以下にまとめました。
1.病気そのものが難治性。
2.患者側の要因(身体的、心理的、社会的)
3.医療者側の要因(痛み治療についての知識不足、診療の細分化、縦割り)
【北原式 こんな医者には気をつけろ 慢性の腰痛を治すために避けたい3つのタイプ】
1.話を聞かない。
2.触らない。
3.MRIを撮らずに、レントゲンで診断する。
慢性腰痛に対してレントゲンは全く意味がありません。MRIでないと骨や関節の状態はわかりません。それでもまずはレントゲンがお決まりのプロセスになっているのは、多分に医療機関の経済的な事情でありましょう。
患者と医療者のミスマッチを改善するために、超党派の議員連合で「慢性痛対策議員連盟」を発足し、対策法を立法化すべく動いています。痛みに関連する診療科、スタッフが連携した「痛みセンター」を全国の主要都市に設置し、集学的に痛みを診よう、痛み治療が病院の持ち出しという現状を打破し、予算をつけ、医療者の質も上げていこうという取り組みです。そのためには患者側も痛みについてのリテラシーを向上させ、質の高い医療者、痛みセンターを見極める鑑識力を身につけて頂きたいと思います。