中小企業320万人が路頭に迷うかもしれない
20年10月に行った分析では「対人コロナ4業種」の約87万中小事業者の6割である約52万事業者に企業持続の困難などの悪影響が生じる可能性があるという試算になった。「対人コロナ4業種」の中小企業の従業者数は約533万人(2016年、中小企業庁調査)と雇用全体(約6600万人)の約1割弱を占めており、約320万人の雇用に悪影響が生じる可能性がある。
また、これら「コロナ対人4業種」企業は地域経済と密接に関わっている。例えば、「コロナ対人4業種」の仕入・材料費、外注費の支払先地域は、同じ市区町村内や都道府県内が多い。このことから「コロナ対人4業種」の事業者の経営不振は同じ地域の取引先の小売業・卸売業企業の経営にも影響を及ぼすことが想定される(図表5)。
以上のように、新型コロナの感染拡大が長期化すると、その影響はその後も長期にわたる「コロナ対人4業種」の不振と雇用不安を引き起こし、地域全体の経済や雇用への影響をも引き起こし、結果として日本経済の新たな「失われた数十年」にもつながりかねない。そのことを踏まえて、20年10月の分析では、失業なき雇用移動や家賃補助等で固定費負担を軽減することで過剰債務の積み上がりを極力抑制することを提言した。
対人4業種への対応が地域経済の将来を左右する
20年10月の分析の後、法人企業統計調査では20年度の四半期別調査が公開されている。残念ながら、四半期別調査では資本金1千万円以上の企業のみが対象で、それ以下の中小企業の借入金や固定費等の財務データを把握できない。そこで、四半期別調査データの売り上げの情報(図表6)を活用して、図表4で行ったコロナ対人4業種の債務償還期間試算を見直したのが図表7である。
やはり、試算の見直しでも厳しい状況であることがわかる。結果として、コロナの影響は21年後半まで継続している。このように債務が返済困難な水準まで大きくなっていると思われる「コロナ対人4業種」の企業への対応は待ったなしであるが、既に述べたように地域経済そのものへの影響もあることから、これらの企業への対応をどのようにすべきかは、日本全体の将来にも関わる大きな問題である。