「テレワーク再開は時代遅れ」と言っているのはどこの誰だろう

1つ目の論点「そもそもテレワークの実施率は高かったのか」について考えてみる。現状のテレワーク実施率を確認してみよう。テレワークに関する調査結果は政府、自治体、民間の研究所、人材ビジネス企業などさまざまな機関が発表しているが、ここでは、東京都のデータを用いる。2020年4月から毎月、定点観測データとして調査と発表が行われてきたこと、日本、いや世界でも電車による通勤ラッシュが激しいエリアとして知られ、人流の制限による感染症対策が叫ばれたエリアだからである。コロナ前から東京五輪に向け、テレワーク導入が推進されていた(少なくとも呼びかけられていた)エリアだ。

東京都でのテレワークの実施率(導入率)は、コロナ前の20年3月には24.0%だったが、初の緊急事態宣言が発出された同年4月には62.7%にまで上がった。その後、宣言解除などにより実施率は低下し、同年12月には51.4%まで下がったが、21年に入り、再度緊急事態宣言が発令され、1月後半には60%台となった。21年はほぼ55.0%以上で推移しており、感染が拡大した9月には65.0%となった。緊急事態宣言が解除された21年10月には55.4%となっている。コロナ禍以降、おおむね約6割の企業がテレワークを実施しているといえる。

なお、実施率は企業規模によってメリハリがある。21年10月は300人以上の企業では84.5%が実施していたが、100〜299人の企業で57.0%、30〜99人の企業で47.0%だった。

週の中での実施日数は週3日以上が48.7%で、週5日は22.7%だった。選択肢としては、週1日のみが最も多く32.2%となっている。東京都が発表した資料では「週3日以上が48.7%」と表記されているが、これは印象操作ではないかと思ってしまう。週2日以内が51.3%とも言えるのだ。