東京ですら「誰でも」「毎日」テレワークをしているわけではない

ただし、この導入率はあくまで企業としてのものである。テレワークを実施した従業員の割合は9月が48.9%、10月が48.4%だ。最もテレワーク実施率が高かった21年8月においても54.3%だった。

ここまでのデータを振り返ってみると、国内でもテレワーク実施率が高いと考えられる東京都においては、企業としての実施率は6割前後で推移してきた。しかも企業規模が大きいほど実施されていることがわかる。さらに、従業員としてテレワークを実施したのは半分程度である。毎日テレワークという企業は約2割にすぎない。

リモートワークで働く女性の手元
写真=iStock.com/west
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言うまでもなく、テレワークは企業規模だけでなく、業種、職種などによりその普及率、実施率には差がある。特に公共関連の仕事、医療、肉体労働従事するエッセンシャル・ワーカーなど、必ず通勤しなければならない仕事も存在する。

テレワークを減らし出勤日を増やすという経団連などの方針に対して反対する声がネットで上がった。ただ、この働き方が広がっていると言われている東京でも、どの企業でも、誰でも、毎日、テレワークをしているわけではないということを確認しておきたい。

現状のテレワークは必ずしも効率的ではない

2つ目の論点は、「現状のテレワーク(特に在宅勤務)に問題はないのか」についてである。結論から言うと、テレワークは、通勤時間を減らす、家で仕事をすることができるという点では、ワークライフバランスの充実などに貢献する。現状の労働法制では、時間管理などにおいて厳密には自由で柔軟な働き方を実現できるわけではない。とはいえ、自由度が高い働き方ではある。

もっとも、現状のテレワークは必ずしも快適な働き方ではない。自宅は快適な仕事環境といえるのか。通信環境やテレワークの仕組みは快適だと言えるのか。育児や介護に関わりながらの業務は負荷が増えないか。孤独・孤立に苦しんでいないか。ITに慣れていないゆえにストレスがたまっていないか。仕事の無茶振りなどを含む、リモハラに悩んでいないか。「痛勤」とも言われるラッシュも問題だが、在宅勤務の連続で運動不足になったり、ストレスがたまるのも問題だ。

これらの件について「対応できないお前が悪い」「ITに慣れていないおっさんに合わせるのはどうか」という意見がネット上では跋扈ばっこする。気持ちはわかる。とはいえ、快適なテレワーク環境を企業が完全に提供しているわけではない。そして、ITに慣れていないのは別に「おっさん」とは限らないのだ。

特にIT企業は、コロナ前、職住近接をすすめていた。通勤の負担を軽減するだけではない。オフィスや、その周りのエリアで密に膝詰めで情報交換することを意図していた。海外でもIT企業は出社の再開を模索しているし、中にはGoogleのようにニューヨークの一等地のオフィスビルを購入した企業もある。

誰もが必ずしも「快適な」テレワークを実施できているわけではない。そして、従業員の意向だけでなく、企業としていかにパフォーマンスが上がるかどうかを模索するべきなのである。