「甘い香りがするチョコレートのようなコーヒー」
11月12日、13日に各店舗で開催された「第3回パナマゲイシャまつり」では、焙煎したばかりの同じ豆を4分の1分量のミニカップ(9000円相当)にし、採算度外視の「500円」で提供。都内の店では行列ができ、テレビの取材も入るほど人気を呼んだ。
ゲイシャ種は「花のような甘い香りと野生の甘い果物のような味がする、チョコレートのようなコーヒー」(太郎さん)。近年は中国系の業者などが買い付けるようになり、5年連続でオークション価格が上がる中、「コーヒー好きの皆さんと“しあわせの共有”をしたい」と落札のボタンを押したという。破格の500円で提供したのも同じ思いだ。
オークションで、中国マネーが相手でもひるまない姿は「SAZA COFFEE」を海外でも認知させた。活動に興味を抱く人は海外にも多く、「最も有名な国際審査員」という声も聞く。
別のイベントでは高級コーヒーも来場客に無料で振る舞う。同社名物の“タダコーヒー”だ。「『良い材料×良い技術×良い人材』で、もっと美味しい商品ができます。コロナ禍で気が滅入る時期だからこそ、楽しんでいただきたい」と話していた。
一方、人知れず苦悩も抱えていた。
自ら試飲コーヒーを何百杯と配る日々
「今まで成果を上げても『親の手柄』になることが多かったのです。現在の売れ筋のコーヒー豆も、本当はぼくが開発したものもあります。でも脚光を浴びるのはいつも父親。それなら別のやり方で実績を上げようと、東京都内の出店要請に積極的に応えました」
サザコーヒーが茨城県から利根川を越えたのは2005年。JR品川駅内の商業施設・エキュート品川に店舗を出し、東京出店を果たした。現在は15店舗に拡大したが、当初、両親は東京進出に懐疑的だった。
「品川店開業の前に、三越日本橋本店と渋谷・東急東横店(当時)の東急フードショーでの催事に何度も参加しました。この百貨店催事の経験が大きかったですね。
催事を継続できる条件は『売り上げ数字と集客数』でしたが、与えられた数字の数倍を達成。お客さんは味が分からないと興味を持たないので、ひたすらコーヒーを手で淹れ続け、連日何百杯も配り、足を運ばれた人にミニカップで試飲してもらいました。
1対1でお客さんと向き合うと『買わされるのでは』と警戒されてしまう。10人ぐらいの方と一緒なら安心して興味を持たれる。たくさんの人にミニカップで提供し、味を評価いただくと一定数の人が買ってくださいました」
この経験を踏まえてJR品川駅構内に出店。ここでも成果を上げてJR大宮駅(埼玉県)構内にも出店した。サザコーヒーの首都圏戦略は順調に見えたのだが……。