(2)の象徴は、翌11月の「パナマゲイシャまつり2020」に新橋・金田中の芸者衆3人を招いたことだ。「『ゲイシャ』の由来はエチオピアのゲイシャ村ですが、初めてその名前を聞くと、日本の芸者さんをイメージする。それなら『誤解を深めよう』と考えたのです」

「パナマゲイシャまつり2020」に参加した駐日パナマ大使と芸者たち
写真=サザコーヒーホールディングス
「パナマゲイシャまつり2020」に参加した駐日パナマ大使と芸者たち

「あんたが社長になったら会社は潰れる」

だが、同年の春から初夏は胃が痛くなる日が続いた。繁盛店のサザコーヒーもコロナ禍の最初の緊急事態宣言により店舗が営業休止、さらに日本中の外出自粛で大打撃を受けた。

「2020年4月13日、全店の売り上げが1日約50万円でした。14店(現在は15店)で約50万円は過去に例がない数字。従業員が約200人いたので、1人当たり2500円です。その後も厳しい状況が続き、4月と5月は赤字幅が拡大しました。

以前、母親には『あんたが社長になったら、会社は潰れる』と言われました。就任の年にコロナ禍で経験したことのない赤字額。この言葉がよみがえってきましたね」

実は太郎さんは、県立高校を中退して私立高校に編入して卒業。その後大学に入学~卒業まで年齢を重ね、20代の頃は親からみれば「ハラハラする人生」を送った。

同社の取締役営業部長の小泉準一さんは、コロナ禍でのこんな光景を覚えている。

「今までにない会社の苦境で、私もいてもたってもいられなくなり、早朝5時に出社しました。すると社長が徹夜でひたすらコーヒーを焙煎し続けていたのです」

太郎さんは、2019年までは年間150~200日を海外で過ごし、産地訪問や品評会の審査を繰り返した。コロナ禍で渡航できなくなると自社で焙煎を続け、多彩な味を追究した。

「コーヒーは焙煎の違いで、こんなに味が変わります」を伝え続ける。以前の取材では、その場で「IKAWA」(英国製の高機能小型焙煎機)でコーヒーを焙煎してくれた。

ネット販売を強化し、コロナ禍でも黒字を確保

昨年の苦境下でも商品開発の意欲は旺盛だった。ラテアートをコーヒーゼリーで再現した「ラテアートコーヒーゼリー」、天然色素でつくった層状の虹色クレープ「レインボーミルクレープ」などを開発。発売すると話題を呼んだ。

見た目も鮮やかな「レインボーミルクレープ」
提供=サザコーヒー
見た目も鮮やかな「レインボーミルクレープ」

以前から注力していたネット販売もコロナ禍で強化。公式サイトも刷新すると前年の3倍増となった。店内飲食のみだったケーキもテイクアウトや冷凍通販で販売。店の営業再開とともにお客が戻り始め、2020年の業績は「黒字を確保」した。最大手のスターバックスですら単年度赤字となった年だ。規模は違うが「サザコーヒー強し」を印象づけた。