「性に関する事柄は親が決める」で本当にいいのか
【新島】「障害のある子どもは、発育の遅い子が少なくありません。性器自体もあまり発育しない子も多い。でも、性に対する欲求はある。
人前で性器を出したりいじったり、という行為に関しては、『やめなさい』と言えば、その場はやめるけれど、ただやめさせるだけでいいのでしょうか。欲求は、身体が大きくなればなるほど増えていきます。大人になってから急に言われてもできないので、小さいうちからルールを教えていかないと、収まらない。
せめて、職員同士では話をしていかないといけない。うちの施設でも、性に関する問題について、職員が報告しやすい雰囲気をつくることはできたので、その先の具体的な解決をどうしていくか、がこれからの課題です。
現在は、自慰行為を含めて、性に関する事柄をいつ・どこまで子どもに教えるのかについてのさじ加減は、親御さんが決めることがほとんどです。
でも、『親が決める』で本当にいいのでしょうか。障害児支援の現場においては、子どもの権利よりも親の権利が大きくなるのは事実です。でも、実際は親御さんにも正解が分からない。そこそこ自立度が高い子の親御さんに、『お子さん、これから恋愛ができるといいですね』と伝えると、『うちの子は無理無理』と言われてしまう。最初から子どもの可能性をつぶしてしまっている。
「最低限のガイドラインが欲しい」
保護者に向けた教育というか、子育てや自立の方向性を見出すためのサポートをする機関があまりにも少ない。結果として、誰にも相談できずに行き詰まる人が多い。国の制度以外に、有料でもいいから頼れる場所をつくっていかないと、親御さんも行き詰まってしまう。
放デイの職員も、普段から親御さんとコミュニケーションの積み重ねがあれば、性に関するトラブルが起こった時も話しやすい。
学校を卒業した後、グループホームや生活介護に入ってから教えていくのか。その先はどうしているのか。いつ、どのようにルールを教えて、どうすればいいのか。
こうしたことに対して、最低限のガイドラインがあれば……と思います。大事なことなのに、日本社会にはルールがない。
性に関する問題は、一生の問題です。まったくそうした問題が起こらない子もいるのだろうけど、多くの場合、必ずぶつかる問題です。そのため、子どものうちからどういう指導をしていけばいいのか、ある程度の方向性が示されていればいいなと思います」