「トゥレット症」は、自然に身体が動いてしまう「運動チック」と、自分の意思に反して声が出てしまう「音声チック」が1年以上持続すると診断される。小学3年生の時にトゥレット症を自覚した酒井隆成さんは「僕の場合、ADHDや強迫性障害、汚言症といった併発症があるのですが、アメリカの学校では驚くほどすんなりと受け入れられました」という――。

※本稿は、酒井隆成『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

現在は重度訪問介護を専門とする会社で働く酒井隆成さん
撮影=扶桑社
現在は重度訪問介護を専門とする会社で働く酒井隆成さん

くしゃみと同じように止めるのが難しい

チック症は日常生活において、さまざまな負担を与えます。

まず、代表的な負担は心身的な不快感でしょう。

チック症は不随意ふずいい運動と呼ばれる運動の一種で、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまうという特徴があります。ものすごく集中して頑張れば動作を止められることもありますが、大半の場合は止めることは困難です。

みなさんは、“くしゃみ”を、自分の意思で止めたことはあるでしょうか?

頑張れば自分の意思でくしゃみは止められるかもしれませんが、かなりの努力が必要だし、無理に止めた場合は不快感も残るし、反射的に出てしまうものなので、毎回止められるものではないと思います。

激しい運動チックで骨折することも

チックの感覚をあえてお伝えするならば、「くしゃみが出る!」と感じたときの感覚が、身体中にずっと続いているような状態を、何十倍も不快にした感じ。それがチックの症状に近いのではないでしょうか。

チック自体による不快感のほかに、運動チックによって自分で身体を傷つける自傷行為に加え、意図しない力が身体にかかることでの関節や筋肉の痛み、音声チックで声を出し続けることによる喉の痛みなども発生します。人によっては、激しい運動チックが発生して、骨を折ってしまうこともあります。

それに加えて、チックで身体が動き続けると、普通の人よりも運動量はかなり多くなり、とにかく体力を消耗します。そのため、一日の終わりにはぐったりしてしまいます。