病気はひとつの個性であり、特別扱いしない

そんな恵まれた環境で学校に通えたおかげで、僕の病気について何か言う人間はほとんどいませんでした。

仮に事情を知らないほかの生徒から「お前はなんでそんな風に声が出るんだ?」「どうしてリュウセイは身体が動くんだ?」とからかわれたとしても、「こういう病気なんだ」と説明したら、それ以降同じ話題について相手は触れてこない。たまに、それでも病気について突っ込んでくる人がいたら、周囲の生徒たちが「彼は病気なんだからそういうことを言うな」と率先して反論してくれるような雰囲気もありました。

酒井隆成『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(扶桑社)
酒井隆成『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(扶桑社)

このアメリカでの経験で、僕が抱いていた障害に対する価値観はだいぶ変わったと思います。

僕が出会ったアメリカ人の生徒たちは「そういう病気を持っているのはひとつの個性であって、本質はまた別のところにある」という考えを持っていて、受け入れている。

誰もが「病気があるから、なに?」という姿勢を貫き通していて、チックの症状を持つ僕を決して特別扱いするわけではないけれども、必要な配慮はしてくれるという、非常にほどよい距離感を保ってくれました。

日本でそんな対応に出会ったことは一度もなかったので、こうした生徒たちの様子を見て、「この国はすごいな、なんなんだ!」とかなり衝撃を受けました。

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