「どうすればいいか」という議論がなかなかできない

放デイに通っている男の子で、自分で射精をするところまではできるのだけれど、その後に自分で後始末をすることができない、というケースがありました。

まずパーテーションの裏で射精をしてもらい、その後で男性スタッフが後始末をする、という形で対応していたのですが、男性スタッフがいない時に女性スタッフが対応した結果、うまく誘導ができず、途中で精液をかけられてしまった、ということもありました。

本人に注意しても、『なぜダメなのか』が分からない。それでも、きちんと職員全員で対応していかないといけない。高学年の子も多いですし、身体も大きくなる。学校を卒業する日も近づいている。そうした中でも、不意に人前で性器を出したり、いじることがある。注意すると、その場だけは隠したりするのですが、気が付けば、また出していじっている。周りには女の子もいる。

そうした状況下で、どのように対応していけばよいのか。本当に悩ましいです。話しあう場所がない。『こういうことがあったんですよね』という報告だけで終わってしまう。『ではどうすればいいか』という議論がなかなかできない。

学校で話しあえる先生もいたのですが、最近は、先生と連絡を取ろうとしても、『情報の共有は保護者の方を通じてお願いします』と言われてしまうことも多い。難しいです。

性の問題については、放デイだけでなく、家庭や学校を含めて、全員が力を合わせて教えていかないと、障害のある子どもたちには習慣づいていかない。学校を卒業してからもそういうことが続くようだと、社会生活がうまく営めない。場合によっては、性犯罪になってしまう。学校・デイ・家庭での連携が必要だと思います」

卒業までのタイムリミット

性に関する問題は、共有すること自体が難しく、なかなか根本的な解決にまではたどり着かないことが多い。そうした中で、十分な支援ができないまま、学校と放デイを卒業する時期が来てしまうことに対して、新島さんは危機感を抱いている。

【新島】「放デイはあくまで子どものための施設なので、親に対するケアが少ない。親御さんが本当はどう思っているかについては、なかなか話せない。もどかしいです。

本当は、直接親御さんに『自慰行為が止まらないのだけれども、どうすればいいのか』と聞きたいのだけれど、それについては会社からストップがかかってしまう。

子どもたちに教えられることはいっぱいあるようで、実は少ない。私たちは、子どもたちに対して、本当に大事な話ができているのかな……と考えることもあります。

卒業までの時間は短いです。高校を卒業したら、『障害児』ではなく『障害者』になるため、利用できるサービスが減ります。

自慰行為について、親御さんに伝えることができた場合でも、『とにかく止めてください』と言われることが多いです。しかし、『止める』といっても、止めた後にまたやり始めるので、ずっと止め続けなくてはいけない。

本人の気分転換につながるような支援をしたり、一定の場所や時間を決めたり、パーテーションなどで区切った空間を作って、そこに誘導してやってもらう……といった解決案を議論するところまで、たどり着かない。力ずくで無理矢理止めて、本人が荒れて、他害行為を繰り返す……という状況が続くだけで、根本的解決にはならない。

学校でも家庭でも、性に関する知識やスキルは教えられない。射精行為を教えるべきなのか、それとも知らない方がいいのか、家庭で教えるべきなのか、それとも放デイで教えるべきなのか。子どもの知的レベルによって判断は変わるので、いつも迷います。

一度覚えるとずっと自慰行為をし続けてしまう子どももいるので、悩ましいです」