性的なトラブルを共有しやすくする関係づくり
性の問題は、職員同士でも話しづらいが、保護者に対してはさらに話しづらい。保護者に対しては、どのように伝えているのだろうか。
【新島】「児童発達支援管理責任者になって、保護者の方とのコミュニケーションが非常に大事であることを実感しています。日頃から連絡を取りあい、些細なこともすぐに報告する。そうしたつながりがあれば、性的なトラブルが起こっても、言いやすい関係をつくることができる。日頃からの関係づくりを心がけています。
親の経済状況によって、子どもの気持ちの裕福度や性格は変わると思います。裕福な家庭の子どもは、カリカリしておらず、愛情を受けて育ったんだろうなと思わされることが多い。親にも相談がしやすい傾向があります。
保護者同士のコミュニケーションの場としては、親の会などの横のつながりがあります。このネットワークはすごくて、あっという間に情報が知れ渡る。うちの施設や職員が保護者からどう思われていて、どんなことを言われているかといった情報も、逆にこのネットワークから入ってきたりします。下手なことを言ったりすると、保護者から直接デイを経営している会社にクレームがいく。
ただ、こうした親同士のネットワークには、入れる人と、入れない人がいる。クレームや噂話以外に、本当に大切なこと、デイと保護者の間で話しあわないといけないことは、もっとたくさんあるはずなのに……と思う時もあります」
外国籍の子どもの性問題はさらに解決が難しい
新島さんの勤める放デイのある地域は、外国籍の住人も多く、その子どもたちも通っている。現在、利用者全体の約三割が外国籍の子どもだそうだ。裕福な家庭で育っている子どももいれば、シングルマザーや生活保護の家庭で育てられている子どももいる。
言葉が異なると、本人や保護者とのコミュニケーションがうまく取れず、ただでさえ対応が難しい性に関するトラブルが、ますます解決困難になる場合もある。
【新島】「両親がイスラム教の外国籍の女の子が、部屋の真ん中で自慰行為を始めるようになりました。日本人と比べても身体の発育が良いので、性的な面での成長も早かったのでしょう。職員が自慰行為を止めようとすると、とにかく暴れまくる。周りにいる他の子どもたちを殴ったり、ひっかいたりする。走り回ってあちこちの壁にぶつかっていき、へこませてしまう。
トイレに誘導しても、そこでは決してしようとしない。みんなのいる共有スペースで自慰行為をしたい、という願望があるようで、かたくなに移動を拒む。そこで、共有スペースの真ん中で布団をかぶせて、その中でしてもらう形にしました。
他の子どもたちが遊んでいる中で、その女の子だけ、部屋の真ん中で布団をかぶって自慰行為をし続ける……という奇妙な時間が毎日続きました。保護者の方に相談しても、日本語が通じない。ただでさえ微妙な問題なのに、保護者の方とコミュニケーションが思うように取れないこともネックになりました」