米国の輸入全体のなかで、中国からの輸入は2割程度である。しかし、米ピーターソン国際経済研究所によれば、医療品に限るとこの比率は26%であり、そのなかでも国民の生命を左右しかねない個人防護用品は72%、ゴーグルは55%と高水準に達している。筆者は、こうした米中間の対立は、資本主義と共産主義の覇権争いであり、世界が2つの陣営に分断されるブロック経済化の進展を懸念している。

2008年11月、中国政府はリーマン・ショック直後の輸出急減を受け、約4兆元(約57兆円)の大規模な経済対策を決定し、世界経済を反転させるきっかけとなった。それ以降、中国の存在感は高まる一方で、今や共産主義と資本主義の最終決戦かとささやかれている。キーワードは「デジタル専制主義」である。

デジタル革命で息を吹き返した共産主義

「デジタル専制主義」とは、2018年1月のダボス会議で注目された言葉で、「経歴、嗜好、個人の行動など、あらゆる情報が国家の管理下にあり、データを掌握する者が世界の将来を左右する」状況を意味する。中国が「デジタル専制主義」に向かうなか、民主主義は意思決定のコストやスピードなどの面で不利なので、中国が覇権を握るとの懸念が強まっている。

筆者が、2018年5月に、米国ロサンゼルスのビバリー・ヒルトン・ホテルで開催された「ミルケン会議」に参加した際に、面白い場面があった。ミルケン会議は、「ジャンク・ボンド王」として有名なマイケル・ミルケンが主催する国際会議で、米国版ダボス会議とも呼ばれている。

2018年の会議で、英国のブレア元首相が、「ヒストリー・イズ・バック(History is back!)」と発言したことが注目を集めた。1992年、米国の政治学者であるフランシス・フクヤマは『歴史の終わり』(渡部昇一訳、三笠書房)を出版して、共産主義の資本主義への敗北を「歴史は終わった」と表現した。ブレアはこれをもじって、「(中国などの共産主義が復活して)歴史が戻ってきた」と評したのである。

確かに1989年にベルリンの壁が崩壊して、一度、歴史は終わったわけだが、そもそも共産主義にはどういった欠陥があったのだろうか?