覇権争いは今後10~20年続く

話を元に戻そう。今後ますますヒートアップする米中貿易摩擦は、どのような展開になるだろうか。

一般論として言えば、米国よりも中国のほうがやや分が悪い。

その理由としては、第一に経済規模の違いがある。2017年の名目GDPで両国の経済規模を比較すると、米国は中国の約1.6倍大きい。同額ずつ経済制裁を課していけば、当然中国のほうが先に厳しくなる。

第二に、付加価値に占める製造業のウエイトは、2017年の数値で見ると米国の11.6%に対して、中国は29.9%と3倍近くも高い。このため、輸出入に関税を課すと、製造業のウエイトが高い中国が受けるダメージのほうが大きい。

第三に、GDPに占める相手国への輸出の割合を見てみよう。2017年の数値で米国の対中輸出は0.7%なのに対して、中国の対米輸出は3.6%だ。この数字がそのまま、物品への関税引き上げによる相手国への制裁の上限になるので、米国側が有利になる。

第四に、中国経済は加工貿易型なので、関税によって物流が滞ると、サプライチェーン(部品供給網)への悪影響などからダメージが大きくなる。

こうした要素が重なり、中国経済は依然として回復力の弱い状態が続いている。中国は「面子」を重んじる国ではあるが、本音ベースでは、米国との正面衝突だけは何とか回避したいと考えているはずである。

中国側がとれる選択肢はそれほど多くない。米国に屈服することはできないが、かといって本気で米国に反撃をすることも難しい。そのため、中国は「持久戦」に持ち込もうとしている。米国が中国に課した関税が、自国の消費者に輸入物価の上昇として跳ね返り、中長期的には米国の個人消費が落ち込むという「関税のブーメラン効果」が見込まれるからだ。さらに、米国の大統領の任期は最長8年と決まっており、トランプの任期は最長でも残り4年半程度である。それを視野に入れて中国は籠城戦を挑もうとしている。

米中貿易摩擦は、短期的には貿易赤字が改善に向かえば、米国側が一度、攻勢を弱める可能性はある。ただ中長期的には、資本主義と共産主義の体制間の覇権争いになるので、10~20年程度のスパンで摩擦は続くのではないだろうか。