嫉妬に苦しむ男子学生

眠れぬ夜を過ごした後、私はもう一度勉強し直すことを決意した。次の日、私は精神医学のテキストブックを開いて、情動に関する記述を探した。見つかったのは、曖昧で中途半端な説明だけで、これは私に混乱と退屈を感じさせた。だがここで感じた情動は、しっかりと役に立った。おかげで、ほかの方法を探ってみようと決めることができたからだ。

その直後、ある嫉妬に苦しむ男子学生が助けを求めて私を訪ねてきた。「緊急事態なんです」とその学生は言った。

「僕のガールフレンドは、すごい美人なんです。彼女を失ったら、もう二度とあんなに綺麗な人と付き合うことはできないと思います。同棲して二、三カ月経つんですが、彼女は僕がやきもちを焼くのをやめないと出て行くって言ってます。だからなんとかして変わりたいんです」。

ガールフレンドがほかの男とキスをしているところばかり想像してしまうが、彼女の浮気を疑うような根拠はどこにもないという。ときには出かける彼女を尾行して、本当に仕事に行っているのかどうか確かめたり、居場所を確認するために用事をでっち上げて電話をかけたりすることもある。精神病やうつ病の兆候はなかった。

性的な嫉妬は、情動の中でも特にやっかい

私は、彼の両親の夫婦関係や、幼少期の体験、これまでの恋愛について尋ね、ほかの精神障害の症状がないかチェックしたが、関連性のありそうな要素はなかった。そこで、彼の非理性的なその思考を変えるために、認知行動療法を試みることにした。だが、改善はほとんどみられなかった。男子学生が、「彼女がいよいよ出て行こうとしている」と言うので、もう一度状況を検証してみることになった。

そのころには気心も知れてきていたので、私は病的な嫉妬のよくある原因についても探ってみた。「いいえ、僕は浮気なんかしていません」と彼は答えた。「なぜそんなこと聞くんですか?」

だが彼女の浮気を疑う根拠が本当にないのか、もう一度尋ねると、彼はこう言った。「まったくありません。帰りが遅くなるときは、必ず彼女の親友が一緒にいますし」。「帰りはどのくらい遅くなるの?」私は聞いた。「週のほとんどは僕と一緒にいます。でも、たまに外出して、朝まで帰ってこないんです」。「一緒にいる相手は、本当に女友達だけ?」「ああ、彼女の親友は、女じゃないんです」と彼は言った。

「男の友達で、幼馴染みみたいなものだそうです。でも、ただの友達ですよ」。私はしばらく黙って、今自分が聞いた情報を消化した。それから口を開き、静かに言った。「それについて、ちょっと話そうか」

性的な嫉妬は、情動の中でも特にやっかいなものだ。一九六〇年代には多くの人がコミューンを形成し、自由恋愛主義を標榜して嫉妬を消し去ろうとした。その前提となったのは、嫉妬は社会的な慣習に過ぎず、排除することができる、という考えだった。だが、そのようなコミューンは結局一つも残らなかった。嫉妬は、どんなに押さえ込もうとしても雑草のように必ず湧いてきて、恋愛関係に多大な影響を及ぼす。

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