医師から「子宮が未熟な状態です」と告げられる
生理をめぐっては、普段は少ない女子同士の確執があったという意見もあった。
訓練前になると、ピルの処方の希望の有無を聞かれる。訓練の強度で言えば4学年の陸上要員が最も高いため、下級生がピルを処方してもらおうとすれば「『今のうちからピルを飲むとか信じられない。今からそんなこと言ってたらこれからやっていけないよ』と言われて諦めた」「3学年のときに野営があるから処方してもらおうと思ったら『3年なのにピル使うの』と4学年の女子に言われた」という者もいた。
私自身、1学年の途中から約2年間、生理が止まった。本来であればすぐに病院に行くべきだということは頭では分かっていたが、ただ「楽だから」という理由で放置していた。
3学年時、武装走というフル装備で行う障害物競走のような訓練の本番当日に生理がやってきて、「久しぶりに来た」という安堵と「なんで今……」という悲しみの気持ちが入り交じった。その後もかなり周期が不規則で、一度病院で診てもらった際には「子宮が未熟な状態です」と言われ、「将来妊娠できるのだろうか」と不安になったことがある。
ところが自衛隊を辞した途端周期が安定し、今では二児の母だ。防大在学中は「大体のことは気力でカバーできる」と思っていたが、身体は思ったより正直なんだと妙に感心した。取材の中でもやはり、「生理が止まった」と話す者が複数いた。聞く限り私と同様、「まずいなぁとは思ってたけど、病院には行かなかった」という。
いまだに生理不順が続く卒業生も
訓練期間中、陸上だと山に入ればトイレがないこともある。つまりナプキンを取り替えることもできない。となれば、「生理がない方が楽」と思ってしまうことはやむを得ない。
「防大、自衛隊はやっぱり女子のリズムには合っていない」と指摘する者もいた。今回の取材ではテーマとして「生理」を問うたわけではないが、複数の女子から生理についての言及があった。おそらく、私が聞いていないだけで不調を抱えていた女子はまだいるだろう。
部隊に行ってからピルを飲み始めたというある者は、「生理を自分で管理できるし、生理痛も減ったし、なんなら肌も綺麗になった。なんで防大時代飲んでなかったんだろう」と話す。私は運良く女性としてのリズムを取り戻せたが、卒業して自衛隊を退職し、それなりの月日が経過しても「まだ不順のまま」という者もいる。
生理が来ない、というのは楽なことではあるが、女性の身体にとっては不自然な状態だ。その割を食うのは、子どもを欲したときの将来の自分かもしれないことを、よく認識する必要がある。