第3のタイプはある種の「手抜き」を覚えた人たち
第3のタイプは、東大入試を主にテクニックでクリアしてきた「要領型」だ。
東大生の3割くらいはここに属するだろう。僕自身もこのタイプだと自覚している。
先にも述べたように、東大入試で出題される問題そのものはさほど難しくない。
しかし、とにかく量が多く、受験勉強を通して身につけておかなければならない知識はかなりの量になる。要領型は、この膨大な量の暗記をこなしていく過程でとことん効率を重視し、ある種の「手抜き」を覚えた人たちだ。
このタイプの中学高校での勉強はすべて東大に受かるためにある。学問的な意義など二の次だ。東大入試に出題されない分野、かりに出題されても配点が低い分野の勉強には一切手をつけない。
逆に、東大入試に頻出の分野はひとまず理解を置いておいても丸暗記する。機械的に何十回と紙に書き写し、ゴロ合わせでもなんでも使って覚え切る。
要領型にとって重要なのは、理解の質よりも暗記すべき箇所だ。
時間をかけてその学問を深く理解するよりも、試験に出る要所のみをピンポイントで機械的に暗記してしまった方が気が楽だし、時間もかからないからだ。
本番の試験で得点につながらないことに時間を使うのは無駄——彼らはそう考える。
「選球眼」は東大に受かるための大きな武器
膨大な理解の積み重ねの上にようやく身につく「センス」なんてものははなから捨てる。そう心がける。入試に頻出の分野の基礎的な知識を一通りさらい終えると、早いうちから赤本や青本で過去問に取り組む。
受験本番に出る問題にもっとも近いのは、教科書に載っている練習問題でも予備校がつくっている予想問題でもなく東大の過去問だからだ。直近10年分くらいは問題と解答を丸暗記してもいい。
過去問をひたすら暗記していくと、時間を使って確実に得点するべき問題と最初から解答を諦めるべき問題の見極めができるようになってくる。合格するために必要な得点は全体の6割程度。
つまり、4割の問題はバットを振らずに見送ってもいいのだから、この「選球眼」は東大に受かるための大きな武器となる。過去問を解く際には本番と同じサイズの解答用紙を用意し、解答を書く際の文字のサイズや配置を体に覚え込ませることも重要だ。