「頭が固くて融通が利かない」秀才型
第2のタイプは、コツコツと物事を成し遂げる「秀才型」だ。
世間が抱く「真面目」で「勉強熱心」というイメージにもっとも合致するのがこのタイプだろう。
与えられたノルマを決められた時間内にきっちりこなす。そのための努力ができる人たち。
小学生のころから塾通いをし、同級生が遊んでいるときも真面目に受験勉強にまい進し、東大入試をパスしたような学生たちだ。
天才型ほど頭の回転は速くないが、目標に真摯に向き合い努力ができるというのも才能の一つである。
天才型が規格外なだけであって、秀才型も頭の回転は並の人より十分に速い。一般の人よりも努力をしてきた分だけ優秀だ。
卒業後は、文系なら試験を受けて公務員、民間なら商社や金融、理系なら院を卒業して製造や情報・通信分野の上場企業の技術職、資格で働く薬剤師や獣医師になるものが多い。
僕の感覚としては、東大生の半数以上がここに属している。
秀才型は、その堅実性からか、極端にリスクを嫌う人が多く、野心のようなものはあまり抱かない。
このタイプは、先人によってすでに敷かれているレールを速く走るのは得意だが、自分で未開の土地を開拓して新規にレールを敷くというようなことは苦手だ。
そして、彼らは、自分たちが苦手なことは極力やろうとしない。秀才型がしばしば「頭が固くて融通が利かない」と言われるのは、既存のレールから頑として外れようとしないからだ。
「正解がないこと」への対応力が弱い
これには、主に以下の二つの理由がある。
一つめに、「正解がないこと」への対応力が弱いということ。東大生は、東大を受験するまで、義務教育で9年、高校で3年、「明確な答えがあるテスト」を解き続けてきた。
東大入試にしたって、問題のほとんどに教科書的な決まった解法があり、過去問をやり込んでその解法パターンを丸暗記すればパスできる。
実際の入試では、時として数学などで解答に斬新な発想を要求する問題が出題されることもあるが、その手の問題は「捨て問(解答を放棄すべき問題)」として早々に見切りをつけ、試験時間は教科書レベルの平易な問題に有効に使い、それらでミスをせず確実に得点をするというのが東大受験でのセオリーだ。
つまり、既存の情報(過去問)の外にあるものは、彼らにとっては「捨て問」なのである。東大を受験するにあたり、前例がないこと、解法が存在しないこと、明確な答えがないことに対して、試行錯誤しながら挑むという訓練はしていない。
未知の課題には、かぎられた時間を使うべきではない——それが秀才型東大生の思考法である。