東大合格者数ランキングの常連校とは無縁の高校から合格を勝ち取る生徒がいる。『ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)にはそんな事例が紹介されている。イラストレーターの辛酸なめ子さんは「登場する10人の家庭の共通点は、親が子どもを全面的に肯定し信頼し応援している点。また、子どもは親の所有物ではなく神様から預かった存在といった姿勢もある」という――。

東大合格者数ランキング“圏外”から合格を勝ち取る生徒の共通点

書店に行ったら、東京大学関連の書籍が目立つところに面陳されていました。

ドラゴン桜に学ぶ「東大メンタル」
東大生が選んだ勉強法
東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?
東大思考
東大ノートのつくり方

「東大」をタイトルに掲げている本は次々と出ていて好調そうです。やはり「東大」というジャンルは強力なキラーコンテンツなのでしょうか。うらやましさが募りつつ、売れている一冊を拝読してみました。

ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)は、東大合格者ランキング常連校とは無縁の環境で、孤軍奮闘して合格を勝ち取った10人の学生と、その親御さんにインタビューした本。東大は、地元でも有名な神童が進学するイメージですが、気合いと信じる力と、親の応援があればワンチャンあるのでしょうか?

誰が見ても東大合格にはほど遠かった子たちの「変身」

この本を企画編集したメンバーで、自身も「一発逆転東大生」の西岡壱誠さん(経済学部4年)と岡崎拓実さん(東大OB)の2人が本の中で対談し、分析していました。

ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)
ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)

「一発逆転東大生とは、不登校、成績低迷、通っている学校や家庭の状況など、高校1年生の段階で、誰が見ても東大合格にはほど遠かった子たち」とのことで、そんななか「自分でスイッチを入れて前に進んだ結果、逆転合格を手にした」のが「ドラゴン桜的な東大生」だそうです。

2人によれば、こうした一発逆転合格の子は、人から勉強させられるのではなく「自ら東大合格という高い壁を設定」し、世間体にとらわれず、いろんなことにチャレンジできるポテンシャルの持ち主だとか。親も「勉強しなさい」などとプレッシャーをかけず、ポジティブな気持ちで応援して、子どもの夢を否定しない、という傾向もあるそうです。

「難関校出身東大生」よりも「一発逆転東大生」のほうが夢や希望を感じるのは気のせいでしょうか。進学校の中で劣等生だった身からすると、「ドラゴン桜的な東大生」は親との関係を含め、風通しがよくて自由な空気に感じられます。

「難関校出身東大生」の場合、中学受験などでかなりの額を投資され、親や親族の期待を一身に背負っているので、できて当たり前となりがち。そもそも両親も高学歴ということは多く、劣等生の気持ちはわかりません。テストの点がよくても褒められることはほとんどありません。むしろ少しでも成績が悪くなるとピリついた空気に……。