なんで東大合格実績がほとんどない中堅の学校の子が東大へ?

若くして使命感が芽生えたMさん(女性、文科3類2年)のエピソードも心に残りました。都内の中堅私立中高の生徒会の役員の選挙に立候補。「生徒自身が物事に主体的に取り組める空気をもっと作りたい」という、イノベーティブな使命感を持っていました。生徒会活動に励んだMさんは、全国の高校の生徒会活動で優れているものを選出する「日本生徒会大賞2019」に応募し受賞。さらに個人の部で「日本生徒会大賞奨励賞」を受賞し、その経歴をもとに東大の推薦入試に挑みます。

今の時代、東大には推薦入試制度という魅力的な枠があることをこの本で知りました。推薦というと一般受験より入学しやすいような印象もありますが、簡単ではありません。Mさんは事前審査のため約70ページの論文を提出し、面接でプレゼンテーション。生徒会長という要職で培われたリーダーシップや発言力が生かされたことでしょう。そんなMさんの背中をいつも押してくれていたのは母親でした。Mさんは、この成功体験をもとに政治家になりそうなポテンシャルを感じます。

東大赤門
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Kさん(女性、理科2類1年)のエピソードも印象的でした。東大を受験する人がほとんどいない都内の女子中高に進学。家庭はそれほど裕福ではなかったようですが、Kさんがやりたいことはなんでもチャレンジさせてくれた家庭環境だったそうです。その陰で母親が指輪や貴金属やバッグをこっそり売ってお金に換えていた、というエピソードに胸が熱くなりました。

私の場合、「あなたの学費にいくらお金を使ったと思っているの⁉ お母さんはもうずっと服を買っていないのよ」などとよく責められていたことを思い出します。そう言われて萎縮し、ますます不調のスパイラルにハマっていったような……。

「あなたなら大丈夫」「(ウチの子は)信じるに値する子」

子どもを伸ばすのは、親の全面的な肯定と信頼と応援だと、この本を読んで実感しました。獣医になりたいという夢を抱いたKさんに、東大進学という選択肢を示したのも母親でした。Kさんは高校内では珍しい東大志望者としてアウェー感を覚え、友人と疎遠になりながらも、「あなたなら大丈夫」という母の言葉を支えにします。そして、見事に現役合格。母親はKさんのことを「信じるに値する子」と表現していました。こんな言葉、親から一度でも聞けたら、私も少しはがんばれたかもしれません……。

女子大学付属中高という、内部進学者がほとんどのお嬢様学校から東大に進学したSさん(女性、農学部3年)の母親も、娘を後方支援し続けました。「母は人と違うことをしたい私に『人と同じである必要はない』と言い続けてくれました」と、Sさんは語り、両親への尊敬と感謝を表明しています。家族関係がよいと家の空気に影響して、勉強もはかどりそうです。