「神様から預かった子だと思っています」
不肖私の場合は、女子学院に受かって通っていたものの、中3くらいから成績が低下し、名門大からいい会社に就職することを期待していた親からは失望され、さらに美術大学に行きたいと言い出してからは、激しい反対を受けて、攻防の結果、完全に見放されて透明人間化したように家の中でアンタッチャブルな存在になっていきました。学歴至上主義者の祖母が急に乱心して「どうしても美術がやりたいなら、東大に行って美術部に入ればいいじゃない!」と言ってきたこともありましたが、すでに成績は東大合格などかなわない域でした……。
東大合格者数ランキングに入ってくる有名な私立中高の生徒の家庭は、基本的に経済的な余裕があるので、大学受験のために少人数向けの科目ごとの塾に通うなどして、受験のスキルを高めていきます。経済的に無理して難関校に入ると、財力の壁を感じることも……。
難関校で直面する試練はほかにもあります。それは、とくに努力しなくても成績がいい天才型の同級生の存在です。塾に行かなくても成績はトップで、独学で東大に受かってしまう人もいたりして、凡人としてはコンプレックスが刺激されます。
先日も、知人の息子さんが御三家の男子校から、予備校に一切行かないで東大に受かった話を聞いて衝撃を受けました。その息子さんは3歳の頃から計算がスイスイできて「天才かもしれない……」と思ったお父さん。小学校で大手塾サピックスの入室テストを受けさせたらいきなり一番上のクラスに。難なく御三家の中学に受かり、大学受験では親の心配をよそに「東大に行くから」と断言し、有言実行。東大の理1に合格し、今はベンチャー企業を立ち上げているとか。
「できる子どもは勝手にやっちゃうんです。無理矢理勉強させるのはよくない。放っておけば勝手にできるんです」と、世の父母が羨望の念を抱きそうなお言葉が。「親からすると、神様から預かった子だと思っています」と、天才ぶりを称えていました。
親に失望されてばかりだった子の立場からしても、一度でいいから「神様から預かった子」なんて言われてみたかったです……。勝手に勉強をしたくならなかった自分は、そこまでだったということでしょう。
親が親族に頭を下げお金を借りて、カードローンも使って予備校代捻出
では、この本に出てくる「一発逆転東大生」たちはどうでしょうか。彼らも御三家などの名門校出身ではないものの「勝手に勉強する」タイプが多いように感じます。親や先生から言われて受験勉強するというよりも、高校生のころから使命感や目的意識を持つなど、意識の高さを垣間見ることができます。親御さんたちは、仮に成績が悪くても子どもを否定せず、信頼し、やりたいことを自由にやらせつつ、適宜背中を押してあげているのもポイントです。
例えば、現在東大文学部4年のFさん(男性)の場合、父と母の実家は共に夜逃げ経験ありで、世帯年収は300万円という東大受験には不利な状況でした。でも、「昔からちょっと無理な状況を跳ね返す逆転が好きなんです」と、チャレンジ精神を発動したFさん。参考書を買って自分で勉強しますが、高3の夏まで部活(吹奏楽)に明け暮れていたこともあり現役では不合格。親が親族に頭を下げてお金を借りて、カードローンも使って予備校代を捻出し、一浪して晴れて東大生になれたそうです。世間を騒がせ続ける某K室さんにお知らせしたいエピソードです。
Fさんの受験勉強を支えたのは、家族の間で、お互いを褒め合う習慣。ポジティブシンキングな母親主導で何かとあれば「すごいね~」「あんたやるね~」と、褒めることで息子の成績を伸ばしました。できて当然、という難関校の子どもの家庭ではなかなか見られない習慣かもしれません。