アップルは1社で「iPhone」というプラットフォームを維持している。価格の問題で他社に顧客が逃げることは、単にiPhoneの売り上げが1台減ることを意味していない。iPhoneが作り上げているエコシステムからの離脱を意味する。だから、低価格機種や過去モデルも用意し、「どれを選んでもいい」という姿勢を強く打ち出している。
その他にも、同社がアピールするものがある。それが「下取り」「分割」だ。
「売り方の変化」で価格の感じ方も変わる
アップルは世界中で、古い自社製品を下取りするプログラムを展開している。発表会でも、「下取りを使うことで最大700ドル安くなる」とアップル自らアピールしていた。比較的高く下取りをすることで新機種を買いやすくし、顧客がエコシステムの中にとどまりやすくしているわけだ。
実際新iPhoneの予約時にも「下取りするiPhoneをお持ちですか?」と必ず聞いてくるし、日本だけでなくアメリカでも、購入時に「買い取りをする」人の列が店頭に長く伸びるのが当たり前になってきた。
冒頭で述べたように、携帯電話事業者は現在、スマホ本体を24カ月後に引き取ることで残債をなくすシステムを展開している。これも、アップルの下取りプログラムと同じ考え方である。
そして、当然販売も「一括」ではない。アップルからの直販も、携帯電話事業者からの販売も「分割払い」を前面に推し、いかに新製品でも手軽に手に入るかをアピールしている。
事情はAndroidであっても同じだ。iPhone同様、日本でも売れるのはまず低価格な機種になったが、ハイエンドな機種は携帯電話事業者の「分割と下取り」をうまく活用して買う人が中心になっている。
「iPhoneが高くなった」というのは事実である。
だが、製品価格の上昇以上に「売り方の変化」による価格の変化の影響もあり、高くなったスマホを皆が諾々と購入し続けているわけでもないし、メーカーや携帯電話事業者は「いかに製品を買ってもらうか」に知恵を絞るようになっているのだ。新製品価格にだけ注目していると、市場全体の構造を誤解することになる。